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コラムリスト(毎月更新)
コラムの掲載は終了しました。
日本プライマリ・ケア学会第19回近畿地方会
第2回 神経難病フォーラム
第2回 神経難病フォーラム
阪神養護学校における肥満防止への取り組み
日本脳卒中協会・脳卒中市民講座
6月の研究会:脳神経セミナーと在宅医療研究会
西宮市歯科医師会地域医療委員会研修会での講演
仙台での第7回日本在宅医学会大会
在宅パーキンソニズム患者における呼吸障害
阪神南摂食嚥下障害対策協議会
「猪首」と「なで肩」
神経難病と在宅医療
神経難病フォーラム
日本プライマリ・ケア学会
勉強会あれこれ
西宮脳神経セミナー
日本脳卒中協会
在宅医療ことはじめ
在宅医療と摂食嚥下障害
嚥下障害の勉強会
昨年経験した神経内科の病気あれこれ
パーキンソン病の鑑別診断
当院における在宅神経難病患者の検討
脳卒中と嚥下障害
「医療・生活・教育」相談会に参加して
延髄外側梗塞と嚥下障害
日本神経学会「治療ガイドライン」について
脳卒中週間と脳卒中予防の十か条
嚥下障害の基礎知識
パーキンソン病とイレウス
筋萎縮性側索硬化症
神経内科の病気あれこれ
興味ある頭痛の3例
脳卒中の現状
脳卒中の診療
兵庫県脳神経外科・神経内科診療所医会が発足
第25回日本プライマリ・ケア学会
脳卒中倒れる前に まず予防
関西摂食嚥下・障害勉強会
コラム

 日本プライマリ・ケア学会第19回近畿地方会(神経疾患シリーズ34) 西宮市医師会報「談話室」2005年10月号掲載


つちやま内科クリニック 土山雅人


昨年の日本プライマリ・ケア学会近畿地方会は西宮で開かれ、多数の医師会員や職員の方々の奮闘努力の結果、成功裏に終わったことはまだ記憶に新しいところです。早いもので今年の第19回地方会は11月20日に滋賀県大津市で行われます。以下は、今回の私の発表の抄録です。この内容をまとめて兵庫医学雑誌に投稿を予定しています。


神経難病の在宅診療 −当院の経験から−
【はじめに】当院での訪問診療の経験を通して、在宅の神経難病患者の療養の実際とその問題点について検討した。

【対象】2002年7月から2005年9月の間に当院から3ヶ月以上の訪問診療を行った神経難病患者27例(男:女=16:11、訪問開始時年齢=48歳〜88歳)。疾患は、パーキンソン病・関連疾患:13例、筋萎縮性側索硬化症:6例、脊髄小脳変性症:4例、多系統萎縮症:2例、多発性硬化症:1例、ハンチントン病:1例。

【考察】訪問開始時と経過中に加わった医療処置、臨時の入院、転帰などについて検討した。その結果をもとに、神経難病の在宅診療について、患者側の問題点(症状の進行とその受容、介護者の負担増加など)、医療側の問題点(在宅主治医の果たすべき役割、病診連携のあり方など)、在宅ケア上の問題点(各職種の専門性を高めることと連携を図ることなど)に分けて考えを述べる。

今後さらに在宅で療養する神経難病患者が増加することが予想されるが、それに対応するためには疾患の特異性を踏まえた在宅診療の質的向上が必要である。

 

 「第2回 神経難病フォーラム:神経難病患者を地域で支える」(神経疾患シリーズ33)西宮市医師会「談話室」2005年9月号掲載


つちやま内科クリニック 土山雅人


兵庫県脳神経外科・神経内科診療所医会(会長:山口クリニック・山口三千夫院長)では、昨年に引き続き神経難病に関するフォーラムを下記の要領で行います。今回は「パーキンソン病・関連疾患」をテーマとしました。筆者の疾患の解説に加えて抗パーキンソン病薬の服薬指導について薬剤師さんにもご講演いただきます。特別講演には長年にわたって神経難病の臨床にたずさわっておられる北里大学(神奈川県)の斉藤豊和先生にお願いしました。北里大学神経内科は大学病院としては珍しく、難治性神経疾患の治療のみならず患者さんの療養全般にわたるサポートを行っている施設です。特に在宅人工呼吸療法への支援は本邦でも最も早い時期から組織的に取り組んでおり、現在も筋萎縮性側索硬化症をはじめとする多数の神経難病の患者さんの診療にあたっています。 神経難病に関心を持つ医師だけでなく、ケアにあたるスタッフの方々の参加も歓迎します。周囲にこの分野に興味のある方がおられましたら、ぜひご案内ください。




『第2回 神経難病フォーラム:神経難病を地域で支える』
〜パーキンソン病・関連疾患をめぐって〜
日時:平成17年10月29日(土) 午後3時から
場所:兵庫県医師会館(神戸市中央区磯上通6-1-11)
内容:一般講演
司会 戸田整形外科神経内科 戸田和夫
 屮僉璽ンソン病・関連疾患の基礎知識」
つちやま内科クリニック 土山雅人
◆峭灰僉璽ンソン病薬の服薬指導 −嚥下障害困難患者への服薬の工夫−」
兵庫県薬剤師会副会長・瀧川薬局 瀧川秀樹
特別講演
司会 つちやま内科クリニック 土山雅人
「パーキンソン病の現状と在宅診療の問題点」
北里大学医療衛生学部長・神経内科 斉藤豊和
参加費:無料
申し込み方法:氏名、所属、職種、連絡先FAX番号・住所を事務局(タブセクリック)までFAX(0798-37-5501)してください。
問い合わせやプログラム希望は、つちやま内科クリニック(TEL:0798-66-4547)までお願いします。

 

 阪神養護学校における肥満防止への取り組み(神経疾患シリーズ32)西宮市医師会「談話室」2005年8月号掲載


つちやま内科クリニック 土山雅人


 阪神養護学校は武庫川に接した田近野町(仁川の東方)にあり、筆者は昨年から熊野好晃先生に替わって学校医(内科医は他に大江与喜子先生)となりました。この学校では平成2年頃から児童・生徒の肥満防止に積極的に取り組んでいます。今年7月の学校保健安全委員会で養護教員(八瀬千鶴子先生、大下ゆき子先生)からその成果が報告されましたので一部をご紹介します。  同校は昭和40年に設置された尼崎市立第二養護学校を母体として、昭和47年に阪神養護学校組合立阪神養護学校として認可されました。昭和50年に県に移管され兵庫県立阪神養護学校と校名が変更になり、その後も規模を拡大しながら現在に至っています(詳細はHP参照、http://www.hyogo-c.ed.jp/~hanshin-yogo/)。在校生は小学部、中学部、高等部(他に訪問部あり)あわせて約300名で、主に西宮(三分の一強)、尼崎、宝塚、芦屋、伊丹などから通ってきています。  肥満防止の試みとしては、小学部から徹底した給食指導(偏食指導)とともに、月に数回の体重測定、運動を兼ねた教室・廊下の雑巾がけなどを行い、保護者に対しても肥満防止講演会やアンケートによる食事・間食内容のチェックなどを行っています。中学部、高等部になるにつれ、個々の状態に応じたランニングやフィットネスを取り入れるなどの工夫もしています。このような取り組みは学校側の養護教員、保健部員の先生方やPTAの皆さんだけでなく、歴代の校医の各科医師、歯科医師、学校薬剤師の協力によって築かれたものです。  平成17年4月の時点での小学部・中学部・高等部の各々の全在校生を対象に、ローレル指数(体重を身長の3乗で除する)が145以上を肥満者として、検討が行われました。 ‐学部では肥満者は全学童の15.7%(57名中14名)でした。 中学部では同じく23.2%(86名中20名)でしたが、そのうち内部の小学部から引き続いて中学部に進んだ者では肥満者は17.5%(40名中7名)だったのに対して、外部から同校の中学部に入学した者では28.3%(46名中13名)と高い割合でした。 9眦部では同じく41.3%(143名中59名)でしたが、そのうち内部の小・中学校から引き続いて高等部に進んだ者では肥満者は19.0%(21名中4名)だったのに対して、中学校から入学してその後高等部に進んだ者では27.9%(43名中12名)、新たに外部から高等部に入学した者では54.4%(79名中43名)とより高い割合でした。  今回は全在校生の横断的な検討ですが、その結果からは、小学校から同校で一貫した肥満防止指導を受けている在校生では肥満者の割合は一定に抑えられること、中学・高校から新たに入学した生徒には肥満者が多いこと、また中学の3年間では肥満改善の効果はとぼしいことなどが推察されます。  以上から今後の課題がいくつも見えてきたと思います。例えば、中途入学者に対する肥満防止指導のあり方、肥満者と非肥満者の体力や健康状態の違い、長期の指導によっても改善しない肥満の原因、他校の肥満防止の取り組みとの比較検討などが考えられます。・・とは言え、筆者はこれまで学校医の経験がないので戸惑うことばかりです。この場を借りて皆さまのご指導をお願いいたします。

 

 日本脳卒中協会・脳卒中市民講座(神経疾患シリーズ31)西宮市医師会「談話室」2005年6月号掲載


つちやま内科クリニック 土山雅人


 以前からご紹介しているように日本脳卒中協会では5月末の1週間を「脳卒中週間」として、全国各地で市民に対する脳卒中の啓発活動を行っています。今年はこの期間に、山形、北九州、東京、香川、高知などで脳卒中に関する市民公開講座が開かれました。その一環として、26日には大阪国際交流センターで大阪支部主催の脳卒中市民講座がありました。当日は脳卒中に関して、予防、治療、リハビリテーションの各方面からの専門医の解説と脳卒中患者でもある歌手の西城秀樹さんが自分自身の体験を語るトークセッションがあり、3時間余りの長丁場でしたが多いに勉強となる講演会でした。このようにゲストに芸能人を呼ぶと宣伝効果は大きいようで、会場のさくらホールは満員となりマスコミ関係者も多数来ていていました。


 西城秀樹さんは2年前に韓国・済州島でのディナーショーの際に脳梗塞を発症し、急遽帰国して治療を受けたそうです。最近ではほとんど後遺症もなくなり芸能活動も再開されていますが、この間には歌手として再起できないのではないかという思いからうつ的になった時期もあったそうです。しかし懸命に取り組んだリハビリの効果や家族の支えにより、現役に復帰されています。トークセッションでは以前はタバコを1日に40−60本以上吸うヘビースモーカーで仕事柄生活のリズムが不規則であったこと、無理な減量(長時間のサウナ)をきっかけに脳梗塞を発症したことなどを巧みな話術でお話になりました。


 今回のように有名人が自分の言葉で病気の話をするとインパクトが大きく、今回もこれがきっかけで脳卒中の予防に興味を持った人が増えたものと思います。また、マスコミを通じて効率的なアナウンス効果も期待できるでしょう。医療の話をする時にはもちろんその内容が重要ですが、より多くの人々に興味を持ってもらえるような企画を考えることも大事であると実感しました。

 

 6月の研究会:脳神経セミナーと在宅医療研究会(神経疾患シリーズ30)西宮市医師 会「談話室」2005年5月号掲載


つちやま内科クリニック 土山雅人


 6月にふたつの研究会を企画しました。ご興味のある生方がおられましたら、ぜひ お出でください。いずれも医療・介護関係の各職種の方々のご参加も歓迎します。先 生方の周囲のスタッフの方にもご案内いただければ幸いです。
 ひとつ目は「第2回西宮脳神経セミナー」です。6月9日(木)、午後6時半からノボ テル甲子園で開催します。昨年の第1回では、山口三千夫先生(山口クリニック)を 特別講演の演者としてお招きし、頭痛に関するお話しをしていただきました。今回 は、国立循環器病センター名誉総長、関西労災病院診療顧問の山口武典先生に最近の 脳卒中診療の話題についてご講演していただきます。また、5月末の脳卒中週間(日 本脳卒中協会主催)にちなんで、一般演題として西宮協立リハビリテーション病院の 松本昊一院長に、同院の回復期リハビリテーション病棟で実践されている脳卒中患者 のリハビリ効果の分析を発表していただきます。
 ふたつ目は「第7回在宅医療研究会」です。6月18日(土)午後2時半から西宮神社会 館で開催します。京都まち作り口元気塾(‘くちげんきじゅく‘と読みます)塾長の 金子みどり先生に「認知症の口腔ケアを含む食支援」、救世軍清瀬病院(東京都清瀬 市)神経内科・ホスピス科医長の加藤修一先生に「筋萎縮性側索硬化症の緩和ケア」をご 講演いただきます。金子みどり先生は歯科衛生士の立場から食支援、口腔ケアについ て積極的に取り組んでおられ、そのお仕事はこれまでも何回かテレビや新聞などで紹 介されています。最近では口元気塾での経験をもとに、看護・介護スタッフや家族介 護者のための食事介助技術・方法の解説ビデオを作製され、関係方面から高い評価を 受けておられます。加藤修一先生は長年にわたり東京都立神経病院で筋萎縮性側索硬 化症をはじめとする神経難病の診療に携わっておられた神経内科医の専門医です。現 在はより実践的な立場で神経難病の緩和ケア・終末期医療の現場でご活躍中です。厚 生労働省の特定疾患対策事業の研究班の一員として、「神経難病患者の生活の質」や 「ケアの在り方」などに関する研究活動もされています。
 いずれの研究会も事前申し込みは不要で、参加費は無料です。プログラムをご希望 の方は当院までお電話(57−3600)ください。。

 

 西宮市歯科医師会地域医療委員会研修会での講演(神経疾患シリーズ29)西宮市医師会「談話室」2005年4月号掲載


つちやま内科クリニック 土山雅人


 2月に西宮市歯科医師会地域医療委員会のお招きで神経疾患について講演しまし た。当日は歯科医師会会長をはじめとする歯科の先生方や歯科衛生士さんなど30数名 の皆さんが来られました。講演の内容としては、/牲估皺覆凌芭邸Г泙整貳未砲△ りなじみのない神経内科の診療内容や対象疾患などについての説明、⊃牲估馼臓特 にパーキンソン病について:神経内科で診る代表的な疾患であるパーキンソン病につ いての解説、神経難病の在宅診療:2005年の西宮医師会医学雑誌にも掲載された当 院の訪問診療の内容の紹介、だ歐嚥下障害をめぐって:医科と歯科の接点を取り巻 く問題点についてです。  特に摂食嚥下障害に関しては、阪神南摂食嚥下障害対策協議会にも歯科医師会の先 生が出席されていることもあり、問題意識を共有することができました。そこで摂食 嚥下障害に関して共同して勉強する場を作ることを提案したところ皆さんに賛同いた だきました。その後、世話人になってもらえる先生とも相談し、この勉強会は「摂食 ・嚥下・栄養」、「西宮」、「地域」、「多職種・他職種の連携」などをキーワード として、嚥下障害のみならず食にまつわる問題について実際にケアに当たっているス タッフの意見や疑問を取り入れて考える会にすることといたしました。夏ごろに第1 回目の勉強会を開く予定で現在準備中です。ご興味のある方は当院までお問い合わせ ください。

 

 仙台での第7回日本在宅医学会大会(神経疾患シリーズ28)西宮市医師会「談話室」2005年3月号掲載


つちやま内科クリニック 土山雅人


 2月11・12日に仙台で第7回日本在宅医学会大会(大会長:仙台往診クリニック・川 島孝一郎)が開かれました。会場では在宅医療に熱心に取り組んでおられる尼崎のS 先生やN先生にお会いしました(残念ながら西宮の先生にはお見かけできませんでし た)。その他にも、夜の在宅医療関係の某メーリングリストのオフ会では普段はメー ルでしか知らない全国各地の先生方や関係の各種の医療職の方々ともお話しすること ができました。
 学会では地域の中核的な病院や大学病院などからの発表も多く充実した内容でした が、やはり地域における在宅ケアの要は開業医であり関係の各職種との連携が大切で あることを再認識しました。西宮市医師会でも在宅医療にこれまで以上に目を向ける 方向性が示されていますので、今回の経験をいかしてより良い在宅医療システムがで きるようにお手伝いしたいと思います。
 今回の私の発表の抄録は以下のとおりです。
【演題名】神経難病患者の訪問診療 −当院の経験から−
【目的】当院で行っている神経難病の訪問診療の経験を通して、神経難病患者の在宅 療養の実態を検討した。
【方法】02年7月から04年9月の間に、3ヶ月間以上の訪問診療を行った神経難病(特 定疾患治療研究事業対象疾患)患者21例(47歳〜83歳、男:女=12:9、パーキンソン 病関連疾患9例、筋萎縮性側索硬化症5例、脊髄小脳変性症3例、多系統萎縮症2例、多 発性硬化症1例、ハンチントン病1例)の診療記録を分析した。
【結果】訪問診療開始時の主な医療処置(重複あり)は、胃瘻3例、経鼻栄養2例、持 続導尿3例、気管切開(HOT施行)1例、NIPPV1例。経過中に新たに加わった医療処置 は、胃瘻造設3例、HOT導入2例。一時的な入院加療を要した者は5例・計7回(肺炎・ 呼吸不全:3例で計5回、腸炎・脱水症:1例で1回、大腿頚部骨折:1例で1回)。現在 入院加療中が1例(肺炎、呼吸不全で入院後に気管切開施行)。死亡は4例(いずれも入 院・入所後に肺炎・呼吸不全)。生活環境では、同居者が配偶者あるいは子供一人の みが13例(介護者の年齢が70歳以上が7例、うち1例では介護者の不調のため患者が施 設入所となった)。
【考察・結論】神経変性疾患を主体とする神経難病患者では、進行性に運動機能の低 下を生じ、とりわけ嚥下機能や呼吸機能の低下が在宅療養で大きな問題となる。ま た、最近の核家族化や人口の高齢化により介護力が乏しい家庭が少なくないので、介 護者への配慮も重要である。

 

 在宅パーキンソニズム患者における呼吸障害(神経疾患シリーズ27)西宮市医師会「談 話室」2005年1月号掲載


つちやま内科クリニック 土山雅人


 パーキンソニズムを伴う神経変性疾患(パーキンソン病・症候群)では上気道閉塞によ り重篤な呼吸障害を生じることがあり、生命予後に直結する重要な合併症のひとつと して注目されています。筆者も、発熱・脱水をきっかけに両側声帯の開大不全をきた し窒息状態となったSCD(オリーブ橋小脳萎縮症:OPCA)の1例を過去に経験していま す(土山、他:両側声帯外転麻痺をきたした脊髄小脳変性症.総合臨床1989;38: 2540-2542)。この上気道閉塞の原因は、唯一の声帯開大筋である後輪状披裂筋に神 経原性萎縮を認める「声帯外転麻痺(麻痺性)」の場合と声帯閉鎖作用のある内喉頭筋 群(披裂間筋、輪状披裂筋、輪状甲状筋など)の持続的な筋緊張亢進(ジストニア) による「声帯外転障害(非麻痺性)」の場合があります。
筆者は最近になって、在宅で療養中のパーキンソニズムの3症例において発作性の上 気道閉塞による重篤な呼吸障害を経験しました。いずれも呼吸困難の発作時には吸気 性喘鳴とともに極端な開口と舌根の沈下、前頚部の筋群の硬直などがみられ、従来か ら知られている内喉頭筋群のジストニア(focal laryngeal dystonia)に留まらず、 咽喉頭部ならびに顎下部から前頚部にかけての広い範囲に著明なジストニアが観察さ れました。
ジストニアは長期に経過したパーキンソニズム患者にしばしば生じる合併症で、起こ る部位は眼瞼、顔面、頸部、上下肢など個々によって様々です。ジストニアが起こる 原因は、脳内のドーパミン系を中心とした神経回路が関与していると考えられていま す。一般には1日のうちでもドーパミンの血中濃度が減少する時期(wearing-off時)に 一致してジストニアが生じる場合(off-period dystonia)が多いようですが、血中 濃度がピークに達した時(on時)あるいはそのような変動とは無関係に生じることも あります。また、ドーパ剤以外の抗パーキンソン病薬が病状を修飾する可能性もあ り、ジストニアの背後にある病態は多様です。
今回の3症例のなかにはドーパ剤や筋弛緩剤の投与によりジストニアが軽減したもの もみられましたが、薬剤治療に反応せず重篤な呼吸困難発作を繰り返したために気管 切開に至ったものもありました。このような咽喉頭部、顎下部の筋群のジストニアに より重篤な呼吸障害をくりかえす神経変性疾患の存在は、今後ますます増加すると思 われる神経難病の在宅診療において注意すべき事項と思われます(今回の3症例につい ては兵庫医学雑誌に症例報告として投稿中です)。

 

 阪神南摂食嚥下障害対策協議会(神経疾患シリーズ26) 西宮市医師会「談話室」2004年12月号掲載


つちやま内科クリニック 土山雅人


 先日、表題の会議があり出席しました。この協議会は兵庫県が平成12年度から行っ ている摂食嚥下障害対策事業の一環として今年度に設置されたものです。兵庫県では 高齢者や障害者における摂食嚥下障害に対して積極的に取り組んでいます。これま で、摂食嚥下障害対策検討会議(平成12年度)、摂食嚥下障害対策推進会議(平成13年 度)、摂食嚥下対策普及会議(平成14年度)などのもとに、兵庫県下での摂食嚥下障 害対策の現状把握や病院・施設などにおける実態調査あるいは全県レベルでのシンポ ジウムなどが行われてきました。


平成15年度にはさらに地域での取り組みを進めるために県下を9つの地区に分けて、 各地で独自の摂食嚥下障害対策ネットワーク構築フォーラムが企画されました。阪神 南圏域(西宮市、尼崎市、芦屋市)でも平成16年2月にフォーラムが開かれ、私が 「摂食嚥下障害をとりまく問題点」と題した基調講演を行い、引き続いて事例発表や パネルディスカッションが行われました。この時は300名以上の参加者が集い、各職 種からの様々な意見の交換がありました。


 今年度は、前年度に各圏域で開かれたフォーラムで明らかにされた問題点につい て、地域の特性に応じた取り組みを具体的に検討することが課題として挙げられまし た。そこで、阪神南圏域では三市の医師会、歯科医師会、薬剤師会、保健所をはじめ に県の耳鼻咽喉科医会、看護協会、栄養士会、歯科衛生士会、言語聴覚士会、介護支 援専門員協会などの代表が集まり協議会を開く事になりました。具体的には阪神南圏 域で摂食嚥下障害に取り組んでいる施設の情報を公開して、摂食嚥下障害の検査や訓 練を必要としている人たちに適切な施設を紹介できるようなネットワーク機構を作る ことが考えられています。


しかしそのような枠組みを作るにはいくつもの解決すべき点があります。例えば、残 念なことに西宮市医師会としてこのような摂食嚥下障害の問題に積極的に対応する姿 勢が十分に整っていません。また、各市や県の関係団体も個々ではいくつかの活動を 行っているものもありますが、それを統合して一貫した対策をとるような仕組みが出 来ていません。


摂食嚥下障害は生活に密着した障害です。1日3回無事に食事が出来てあたりまえで すが、ひとたび誤嚥を起こすと命に関わる事態になることがあります。誤嚥を起こさ ないまでも、潜在的な嚥下の障害によって栄養や水分の摂取が不十分なケースは稀で はないと思われます。摂食嚥下障害に留意することは、地域のかかりつけ医にとって 日頃の患者さんの健康管理の基礎になる事項のひとつです。医師会の先生方にはこの 分野にも関心を持っていただければ幸いです。

 

 「猪首」と「なで肩」 −日常診療の中の脳神経内科− (神経疾患シリーズ25) 西宮市医師会「談話室」2004年11月号掲載

つちやま内科クリニック 土山雅人

 神経内科が専門として診る代表的な疾患には、脳卒中やパーキンソン病、各種神経 難病などがあります。しかし実際の神経内科外来ではこのような脳神経疾患以外に も、頭痛、しびれ、めまい・ふらつきなどの極く一般的な症状の患者さんが数多く来 られます。演者の市中病院神経内科での経験1)では、1年間の初診患者(806例)のう ち頭痛を主訴としたものが21.6%、しびれが18.6%、めまい・ふらつきが12.0%でし た。このような訴えを持つ患者さんは各科の日常診療でも少なくないと思われます が、そのなかには思わぬ病態が隠れていることがあります。今回は頚椎の異常に注目 して、「猪首」あるいは「なで肩」でみられる一般にはあまり知られていない病態に ついて自験例を通じて解説します。


 まず1例目は、頭重と手指のしびれ感を主訴に来院した48歳の女性です2)。過去に 先天性の左腎欠損を指摘されています。外観的には著明な短頚があり猪首を呈し、後 頚部の髪の生え際(hair line)が低位で、頚椎の運動制限を認めました。神経学的 には四肢の腱反射亢進と病的反射陽性を認めましたが、明らかな筋力低下や他覚的な 感覚異常はありませんでした。臨床的な3徴(短頸、hair line低位、頚椎運動制 限)からKlippel-Feil症候群を疑い、頚椎X線や頚椎MRI検査を行ったところ、第2・ 第3頚椎間と第6頚椎・第1胸椎間の骨癒合が確認されました。Klippel-Feil症候群 は頚椎を中心とした脊椎の骨癒合を主体とした先天奇形です。本症では骨格系のほか にも心血管系や腎尿路系などにもしばしば奇形を伴うことが知られています。本例の 頭蓋頚椎移行部に関しては環椎後頭骨癒合、環椎軸椎亜脱臼(歯突起による脳幹頚髄 移行部の圧迫・変形を伴う)、歯状突起の頭蓋底陥入があり、他にも脊柱側彎などの 多彩な異常所見を認めました。本症では脊椎の骨奇形の状況によっては、軽微な外傷 でも容易に頚髄損傷を起こす可能性があります。特に本例のようにすでに歯突起によ る脳幹頚髄移行部の圧迫・変形を伴っているケースでは、頚部のストレッチをする際 などには要注意といえます。


 2例目は、後頚部や背部の疼痛を主訴に来院した34歳の女性です。外観的には長頚 でなで肩を呈し、正面からから見ると鎖骨が水平位で鎖骨上窩が浅いという特徴を認 めました。神経学的には特に異常所見はありませんでした。頚椎X線では、脊椎骨自 体に変形はありませんが、側面像で第3胸椎椎体まで観察できました。特徴的な外見 的特徴からdroopy shoulder syndrome(いわゆる、なで肩症候群)3,4)を考え ました。画像的にも診断基準(後述)に合致する所見でした。本症は特徴的な骨格形 態に伴って腕神経叢が下方へ牽引されることにより肩部や上肢に疼痛やしびれ感が生 じるもので、画像診断的な基準としては頚椎X線側面像で第2胸椎椎体まで観察でき ることが挙げられています。臨床的には胸郭出口症候群との鑑別が問題になります が、一般に本症では疼痛やしびれ感などの症状は上肢の下垂により増悪し挙上により 軽減するところが、両者の鑑別のポイントになります。


 頭痛・頭重や頚部の疼痛といった症状を訴える人の中には、今回取り上げたふたつ の疾患のように患者の外見をよく観察することによって診断の手がかりが得られる場 合があります。以上、日常診療のなかで知っておくと役立つと思われる脳神経疾患を 紹介しました。


文 献 1)土山、他:市中病院神経内科における初診患者の分析.神経内科 45: 374‐376,1996.
2)土山、他:頭蓋頚椎移行部の異常を伴ったKlippel-Feil症候群.神経内科 43: 386-387,1995.
3)土山、他:「なで肩」を伴う症例の検討.日本医事新報 3474:29-31,1990.
4)土山、他:Droopy shoulder syndrome.神経内科 38:420-421,1993.

 

 「神経難病と在宅医療」(神経疾患シリーズ24) 西宮市医師会会報「談話室」 2004年10月号掲載

つちやま内科クリニック 土山雅人

10月30日の「神経難病フォーラム −神経難病患者を地域で支える−」では上記の 題名の講演をします(フォーラムの詳細は当院のHPにあります)。講演内容を考える 際に参考にした「在宅医療」あるいは「神経難病」に関するデータをいくつか提示してみます。


『平成14年度患者調査』より

・ある特定の調査日に全国で診療を受けた患者の総数
・在宅患者総数(訪問診療+往診)=72000人
・上記の内訳:
   診療所から=訪問診療25000人+往診18000人
   病院から=訪問診療6000人+往診4000人
   歯科から=7000人
   医師・歯科医師以外から=12000人
・在宅患者の87.7%が65歳以上
・65歳以上の全外来患者の2.3%が在宅患者


『平成13年度国民生活基礎調査』より

・寝たきり者(総数36573例)の主な原因
  脳血管障害(脳卒中など)=36.6%
  痴呆=12.2%
  骨折・転倒=12.2%
  高齢による衰弱=11.7%
  関節疾患(リウマチ等)=6.8%
  パーキンソン病=5.5%
  脊髄損傷=3.1%
  呼吸器疾患(肺気腫・肺炎等)=2.2%
  糖尿病=2.1%
  心臓病=2.0%
  癌(悪性新生物)=0.9%
  視覚・聴覚障害=0.8%
  その他・不明・不詳=4.0%


『難病対策要綱(厚生省、昭和47年)』より

・難病=「原因不明、治療法未確立であり、後遺症を残すおそれが少なくない疾病」
または「経過が慢性にわたり、単に経済的な問題のみならず介護等に著しく人手を要
するために家庭の負担が重く、また精神的にも負担の大きい疾病」

『兵庫県の平成14年度特定疾患受給者証交付件数』より
・特定疾患(いわゆる難病全般)=45疾患
・総交付件数=22506件
・主要な神経難病の交付件数
  パーキンソン病=3272件
  脊髄小脳変性症=962件
  重症筋無力症=583件
  多発性硬化症=385件
  筋萎縮性側索硬化症=346件
  シャイ・ドレーガー症候群=36件
  ハンチントン病=29件


『兵庫県医師会脳神経外科・神経内科診療所医会・会員アンケート(2004年8月)』より

・回答数:26施設/送付数:50施設
・訪問診療の実施は?
  している=20施設、していない=6施設
・現在行っているすべての訪問診療患者数は?
  1〜5例=6施設、6〜10例=3施設、11〜20例=8施設、20例以上=3施設
・訪問診療患者のうち神経難病患者数は?
  特定疾患=56例
  内訳:パーキンソン病関連疾患=30例
    筋萎縮性側索硬化症=13例
    脊髄小脳変性症=6例
    多系統萎縮症=4例
    多発性硬化症=2例
    ハンチントン病=1例
    特定疾患以外=2例
  内訳:脊髄性筋萎縮症=1例
    筋ジストロフィー=1例
・現在在宅で施行している主な医療処置は?
  経鼻胃管の管理=施行患者数3例
  胃瘻の管理=15例
  中心静脈栄養(IVH)の管理=1例
  在宅酸素療法(HOT)の管理=6例
  非侵襲的陽圧呼吸(NPPV)の管理=1例
  人工呼吸器の管理=6例
  気管カニューレ交換=9例
  膀胱バルーンカテーテル交換=4例


『つちやま内科クリニックの実績(兵庫医学誌47:53−56,2004.)』より

・2002年8月から2003年9月までの訪問診療の実績
・訪問診療患者総数=20例
・そのうち、神経難病患者=14例
  パーキンソン病=5例
  脊髄小脳変性症=3例
  筋萎縮性側索硬化症=3例
  多発性硬化症=1例
  進行性核上性麻痺=1例
  シャイ・ドレーガー症候群=1例
・訪問診療開始時に行っていた主な医療処置(重複患者 あり)
  経鼻胃管=2例
  胃瘻=1例
  気管カニューレ交換=1例
  膀胱バルーンカテーテル交換=1例
・経過観察期間中に新たに加わった医療処置(重複患者あり)など
  胃瘻増設=4例
  気管切開=1例
  死亡=1例

 

  「神経難病フォーラム −神経難病患者を地域で支える−」 (神経疾患シリーズ23)西宮市医師会会報「談話室」 2004年9月号掲載

つちやま内科クリニック 土山雅人

兵庫県医師会脳神経外科・神経内科診療所医会(会長:山口クリニック・山口三千 夫院長)が主催する表記のフォーラムについてご紹介します。神経難病のケアには、 医療、看護、介護、福祉の各方面の連携した活動が重要です。地域における神経難病患 者さんにとって、これからのより良い療養環境を築いていくことを目指してこの フォーラムを企画しました。在宅の神経難病のケアに関心を持つ関係者の参加をお待 ちしています(内容等についてのお問い合わせは当院まで)。

日時:平成16年10月30日(土) 午後2時〜4時半
場所:神戸市医師会館 4階 ホール


(1)講演:地域の専門医ができること
【座長】せのお医院・妹尾栄治
1)「神経難病と在宅医療」
つちやま内科クリニック・土山雅人
2)「高度在宅医療の実際」
タブセクリニック・田伏順三


(2)シンポジウム:地域の専門医に望むこと
【座長】
石川リハビリ脳神経外科クリニック・石川朗宏
つちやま内科クリニック・土山雅人
【シンポジスト】
タブセクリニック・田伏順三(脳外科・神内診療所医会)
小林クリニック・小林有希(内科開業医)
公立八鹿病院・近藤清彦(兵庫県神経難病ネットワーク)
東灘しあわせ訪問看護ステーション(くるる)・有本としみ(看護師)
明石基幹型在宅介護支援センター・石井久仁子(介護支援専門員)
全国パーキンソン病友の会兵庫県支部・鶴原敏正(患者会)

 参加費:無料
申し込み方法:次の事項を明記してタブセクリニック
(FAX:0798-37-5501)までFAXで申し込んでください
(参加者1名につき1枚)。
〇疚勝Ν⊇蠡飴楡漾ΝE渡暖峭罅Νた種、またタ牲估馼造虜濛霓芭鼎砲弔い討完娶があ ればお書きください。先着250名の方に参加証を送ります。

 

  日本プライマリ・ケア学会第18回近畿地方会の口演(神経疾患シリーズ22)西宮市医師会会報「談話室」 2004年8月号掲載

つちやま内科クリニック 土山雅人

9月12日(日)に表題の学会が西宮市医師会の主催で開催されることは皆さんご存知のことと思います(ノボテル甲子園、午前9時半〜午後4時半)。当日は、するどい医療政策の分析をもとに積極的な医療制度改革の提言をされている日本福祉大学の二木 立先生の特別講演をはじめ、盛りだくさんの内容です。

 私は一般口演として「拍動性頭痛を伴った一過性全健忘の1例」の症例報告をします。「一過性全健忘」は以前にもこの「談話室」で取り上げたことのある疾患です。

プライマリ・ケアの会で発表するには神経内科的にややマニアックなケースかも知れませんが、特徴的な記憶障害の臨床像を憶えておくと患者さんの話を聞いただけで診断できる脳神経疾患です。簡単に内容を記します(詳細は兵庫医学雑誌に投稿中)。

 一過性全健忘(transient global amnesia;TGA)は、中高年に突然発症する一過性の純粋健忘を主徴とした症候群です。TGAでは、発作時点から新たな記憶が形成できない前向性健忘と発作前に遡る経験を想起できない逆向性健忘が生じます。発作中は自己の認識は保たれていますが、自分の置かれている状況が把握できなくなるために不安を感じ当惑した状態となり、「なぜ自分がここにいるのか」、「ここで何をしているのか」などの同じ質問を何回も繰り返すといった異常行動をとることが特徴的です。一般に記憶障害以外の神経学的異常はみられず、多くは数時間以内に発作中と発作直前の記憶の永久的な脱落を残して回復します。

 欧米では以前からTGAと頭痛との関連が注目されていて、TGA患者は正常対照群に比して片頭痛を有する者の割合が高いとする報告が散見されています。本邦でも山根ら(1999)は彼らの経験したTGAの1/4ちかく(30例中7例)が片頭痛(全例が脳底型片頭痛)を伴っていたと述べており、田口ら(2002)はTGA発作(全13例)に関連して頭痛を訴えた5例のうち2例が血管性頭痛であったと記載しています。このように本邦においてもTGAと頭痛との関係は興味がもたれるところですが、多数例の検討のみならず個別の症例の報告も少ないのでその実態は不明です。今回、拍動性頭痛とともにTGA発作をきたして来院した中年女性の1例を経験しましたので、その臨床経過を報告し片頭痛との関連について検討します。

 

  勉強会あれこれ(神経疾患シリーズ21)西宮市医師会会報「談話室」 2004年7月号掲載

つちやま内科クリニック 土山雅人

先月(6月)はあちこちの勉強会で司会や講演をする機会がありました。いずれも熱心な参加者が多く、準備も大変でしたが自分にも良い勉強になりました。順番にその概要を記します。

まず、川西のK病院では病棟のスタッフの方々に摂食嚥下障害の話を2週にわたってお話しました。ここは昨年秋に新設された病院で、回復期リハビリ病棟や特殊疾患療養病棟(神経難病や遷延性意識障害などの重度の神経疾患を対象とした病棟)を持つ施設です。そのために実際に摂食嚥下障害を持つ患者さんが多数おられ、その対応に苦慮されているケースも少なくないようでした。講演後に延髄梗塞によって嚥下障害 をきたし、その後も唾液誤嚥のレベルから改善しないために頻回に肺炎を起こしている患者さんについて相談を受けました。発症後の経過から考えてこれ以上の改善が望めないようなので気管食道分離術の適応と思いましたが、実際に手術をするとなれば経験のある耳鼻科医との相談も欠かせません。嚥下障害をあつかっている医療関係者のメーリングリストで相談したところ、福井県の嚥下障害の外科的治療のエキスパートの耳鼻科の先生から有益なアドバイスをいただきました。これからの医療連携には、地域で顔なじみの各科の先生との連携と専門家同士のメーリングリストを通じた情報交換のいずれもが重要であると再認識しました。

西宮では通算4回目になる在宅医療の研究会で司会をしました。今回は在宅における「褥瘡の対策」と「尿路管理」をテーマにそれぞれの専門科の実地医家の先生にお話いただきました。どちらも日頃から在宅の場で実際に処置をされている先生でしたので、臨場感に富む内容の実践的な講演でした。参加者も医師や訪問看護師さんなど150名近くのぼり、活発な質疑で予定時間を大幅に超過してしまいました。次回のこの在宅医療の研究会は11月6日に予定しています(テーマは「在宅のリハビリ」と「ストマケア」を考えています)。

尼崎では12回目になる摂食嚥下障害の研究会のコメンテーターとして参加しました。この研究会は尼崎の歯科の先生が主催され、神経内科の私と耳鼻科の先生がサポートして数年前から開かれている会です。こちらも在宅医療の関係者などが毎回100名ほど参加されます。在宅医療では各職種が一対一で患者さんと向かい合わなればいけません。病院や施設のように他のスタッフに声をかけて手伝ってもらう訳に はいかないので、患者さん宅と云う限られた場所で自分のスキルを精一杯活用する必要があります。そのために真剣に自分の知識や技術を向上させようとしている方が多数居られます。在宅ケアの基礎には各職種の業務内容に応じた正確な医学知識が必要と考えて、このような研究会を行っています。

神戸では難病相談室による患者相談会の中で「パーキンソン病」の相談を受け持ちました。50名以上の患者・家族の方にパーキンソン病の解説と日頃の療養生活での疑問点などについての医療相談を行いました。兵庫県ではパーキンソン病の特定疾患の認定を受けている患者さんは3000名以上におられます(西宮では300名以上)。このような患者会の集まりに来られる患者・家族の方はこの疾患をよく理解して知識も豊富な場合が多いですが、その数は全パーキンソン病患者・家族さんの一部に限られます(未認定や認定に至らない状態の患者さんも多数おられます)。また他にも専門的な対応が受けられないケースも少なくないと思われますので、一般への脳神経疾患への啓蒙活動が重要になります。

最後に再び西宮で保健所主催の難病対策講習会で医療関係のスタッフの方々を中心にパーキンソン病の講演をしました。これには当医師会から菊池副会長と田伏先生もゲストとして出席されました。この講演ではパーキンソン病の基本的な病態と特に出席者が関与することが多い慢性期における対応と注意点をお話しました。慢性に経過する疾患ではその時期に応じた対応が必要です。在宅にかかわるスタッフに必要な事柄は、実際に在宅医療を経験していないとなかなか見えてきません。これからも自分の実践の経験をいかして勉強会の活動を続けたいと思います。

 

  西宮脳神経セミナー(神経疾患シリーズ)西宮市医師会会報「談話室」 2004年6月号掲載

つちやま内科クリニック 土山雅人

西宮のより多くの先生方や医療関係者の方々に脳神経疾患についての興味を持ってもらえるように、「西宮脳神経セミナー(代表世話人:兵庫医大神経内科・芳川浩男教授)」と言う勉強会を立ち上げました。本セミナーでは身近な脳神経疾患を分かり やすく解説することを主眼とし、臨床の場で役立つ知識を提供することを第一に考えました。先月に第1回のセミナーを開催しましたが、50名以上の医師ならびに医療関係の各職種の方々の参加があり、まずは盛況のうちに終えることができました。

今回のセミナーでは脳神経疾患のなかでも頻度の高い疾患である「脳卒中」と「パーキンソン病」についての解説と外来で相談を受けることの多い「頭痛」に関する講演を行いました。脳神経系の病気はともすれば取っ付きにくくてなかなか馴染め ないと思われがちです。しかし今後の高齢化社会においてはこのような脳卒中やパーキンソン病などの患者さんがますます増加すると予想されるので、これらの脳神経疾患の理解は重要です。また、頭痛やめまい、しびれなどの一般的な症状の裏には思わぬ脳神経系の異常が潜んでいることも少なくありません。特に頭痛は通り一遍の検査や画像ではなかなか病態を捉えることできないので、見過ごされたままになっていることも少なくないようです。このセミナーではこれからもこのような一般臨床の現場で遭遇することの多い脳神経疾患を取り上げていきたいと考えています。

本セミナーはもともと日本脳卒中協会の「脳卒中週間(5月25日から31日)」に合わせて行うことにしていたので、第1回は5月の末になりました。次回の「第2回西宮脳神経セミナー」は日程を調整して、来年(05年)の6月初めに開催することにしました。内容はまだ未定ですが取り上げてほしい脳神経疾患などがあれば、ぜひご意見をお聞かせください。さらに、本件とは別に兵庫県脳神経外科・神経内科診療所医会(山口三千夫会長)による「神経疾患の在宅医療に関するフォーラム(仮)」を今年10月に神戸で行います。現在、医会のワーキンググループが内容を検討中ですので、こちらに関しては決まり次第ご案内いたします。

 

  日本脳卒中協会(神経疾患シリーズ)西宮市医師会会報「談話室」 2004年5月号掲載

つちやま内科クリニック 土山雅人

 日本脳卒中協会は、脳卒中に関する正しい知識の普及および社会啓発、ならびに脳卒中患者の自立と社会参加を促進する目的で1997年に設立されました。会員は、脳卒中患者とその家族、医療従事者、福祉・行政関係者そして脳卒中に関心のある一般市民などで構成されています。今月は日本脳卒中協会(事務局:大阪、http://jsa-web.org)が提唱している「脳卒中週間」(毎年5月25日〜31日)にちなんで脳卒中に関する話題を紹介します。

 現在、日本脳卒中協会は各地で9箇所(北は札幌から南は鹿児島まで)の県支部で「脳卒中なんでも相談」として電話による一般からの相談を受けつけています。これは脳卒中協会のボランティアの医師や看護師、介護福祉士などが脳卒中にまつわる医療、介護、福祉などの相談を受けるもので、各支部が月に1回いずれかの土曜日(午前10時〜午後4時)を担当するかたちで運営されています。ちなみに私が出向いている大阪事務局は第4土曜日を担当し、毎回10-20件の相談を受けています。これまでの500件以上の相談内容を分野別にみると、医学的な内容の質問がおよそ8割を占め、なかでも脳卒中の影響(後遺症)に関する相談が最も多く(36%)、予防・再発予防(16%)、発症時等の症状に関する相談(7%)がそれに次いでいました。特に後遺症のなかでは、麻痺やしびれ・痛みに悩んでいる方が多いようです。

また、昨年の本コラムでも紹介しましたように脳卒中協会では「脳卒中予防十か条」を作って一般の人々に啓蒙活動を行っています。このなかでは脳卒中の危険因子である高血圧、糖尿病、喫煙、大量飲酒、心房細動、肥満に加えて、高脂血症を取り上げています。脳卒中協会が以前おこなった一般市民(学生、会社員、高齢者)に対する脳卒中の意識調査では驚くべきことに、約6割の人がこれらの危険因子をひとつも正しく答えられなかったとの結果が出ています(中山ら、2001)。脳卒中の医療では、治療の進歩も重要ですが、発症の一次予防も必要不可欠です。

入院あるいは通院している脳卒中患者は全国で約140万人と推定されています。脳卒中の電話相談や啓蒙活動の需要も少なくありませんので、各地で脳卒中協会の支部が次々と作られつつあります。ほとんどの県支部は脳卒中に積極的に取り組んでいる 大学や基幹病院のなかに置かれています。昨年、兵庫県のいくつかの病院に県支部の設置をお願いしましたが、残念ながら今のところ人員不足などでいずれの施設も見送りの状態です。脳卒中の医療を更に広げるためにも、兵庫県でもこのような地道な努力を続けていく必要があります。

 

  在宅医療ことはじめ(神経疾患シリーズ) 西宮市医師会会報「談話室」 2004年4月号掲載

つちやま内科クリニック 土山雅人

 今月(4月)は高砂市医師会のお招きで「高砂市医師会生涯教育研修会」で、在宅医療について表題のような演題名で講演する機会がありました。近隣の加古川市加古郡医師会との共催でもあるためか、木曜日の午後にもかかわらず会場の高砂市民病院の会議室には多数の先生方がお見えでした。

 平成14年の患者調査によると、調査日における全国で在宅医療を受けた患者総数(医科、歯科及び看護等を含む)は7万2千人にのぼります。そのうち一般の診療所で診ている在宅患者数は、訪問診療が2万5千人・往診が1万8千人と多数を占めています。また、在宅患者の87.7%は65歳以上で、これは全国の65歳以上の患者総数(271万3千人)の2.3%にあたります。このところ在宅患者の数は増え続けており、入院病床の削減政策の流れからも今後ますますの増加が予想されます。在宅寝たきり者の原因(平成13年度国民生活基礎調査)をみると、首位は脳血管疾患の36.6%、次いで痴呆(12.2%)、骨折・転倒(12.2%)、高齢による衰弱(11.7%)、リウマチなどの関節疾患(6.8%)、パーキンソン病(5.5%)となっています。これらの上位6疾患で全体の85%になります。

 ひとくちに「在宅医療」といっても多種多様です。今回の講演では当院での神経難病を主体とした在宅診療の経験をもとにして「在宅医療」を、患者側の多様性(病状・病態の違い・・)、診療側の多様性(訪問体制や得意分野など・・)、地域の実情の多様性(医師会の取り組みや介護・福祉との協調体制・・)の面からいくつかのパターンに分けて考えてみました。

「在宅医療」はけっしてひとりではできません。訪問診療を始めてから、「在宅医療」においてはある意味で医師よりも看護師の果たす役割が大きいことを実感するようになりました。その他にも、バックアップしてくれる病院との連携やケアマネージャーをはじめとする各種の職種の方々(多職種・他職種)との連携が欠かせません。医療・介護・福祉のスムーズな連携関係を築くことが「在宅医療」の推進に大変重要であることを強調して、お話を終えました(講演の抄録は当院のホームページに載せています)。

 

  在宅医療と摂食嚥下障害(神経疾患シリーズ) 西宮市医師会会報「談話室」 2004年3月号掲載

つちやま内科クリニック 土山雅人

 今月(3月)は明石市医師会のお招きにより「明石市在宅医療研究会」で、在宅医療と摂食嚥下障害について講演する機会がありました。医師以外にも歯科医師や在宅医療に関わる各職種の方々が集まり、活気のある研究会でした。

 これまで私自身もいくつもの摂食嚥下障害の研究会に出席していますが、その発表の多くは病院での急性期の摂食嚥下障害の対応を取り上げたものです。それはそれなりに有意義な内容をもっていますが、在宅医療の現場で出会う摂食嚥下障害には直接応用できないことが多いと感じています。例えば嚥下障害の診断のゴールドスタンダードであるビデオ嚥下造影(VF)は在宅の場では不可能ですし、またそのような高度な検査を必要とするケースも限られています。

病院では一般に脳卒中などの原疾患が生じて入院した患者さんにおいて,それに付随したかたちで摂食嚥下障害が生じます。これに対し在宅での摂食嚥下障害には以下の場合があると思います。‘院中に摂食嚥下機能の適切な評価・対策がなされないまま在宅に移行したケース。脳卒中後遺症患者や虚弱高齢者のように加齢・廃用によって摂食嚥下機能の低下がより進むケース(‘年‘単位での障害の進行)。神経難病のように摂食嚥下機能の低下が一定期間で進むケース(‘月‘単位での障害の進行)。ず濛靂斗榁罎貿抉蠅簔水などを生じて急速に摂食嚥下機能が低下するケース(‘日ないし週‘単位での障害の進行)。

急性期の入院患者では嚥下訓練を中心とした機能回復の治療がなされますが、在宅では日常生活のなかでいかに摂食嚥下機能を維持するか、そして異常が生じた際の早期発見と迅速な対応ができるシステム作りが求められます。具体的には、日常の食事の際の姿勢の注意や食材・調理の工夫、食事介助のテクニック、口腔ケアの実施などの日常生活に即した援助と日々の注意深い観察が重要になります。

患者宅には他の専門職種が居ないので、かかわるスタッフ個人の能力が患者のQOLに大きく影響します(在宅では直接現場で患者をケアする個々の看護、介護職の知識や技能がより大きな意義を持つ)。病院では摂食嚥下障害患者にかかわる各職種の連携もとりやすいですが、在宅では各スタッフが一堂に会する機会が少なく円滑なコミュニケーションをとるにも努力が必要です。もちろん在宅でもケースによっては病院での精査や治療が必要になるので、専門施設のバックアップは欠かせません。ともすれば忘れられがちになる在宅患者の摂食嚥下障害について、それぞれの地域で各職種・各施設との有機的な連携関係を築けるようにネットワーク作りをしていきたいと思います。

 

  嚥下障害の勉強会(神経疾患シリーズ)西宮市医師会報「談話室」2004年2月号掲載

つちやま内科クリニック 土山雅人

 今年になって西宮ですでに2回嚥下障害の勉強会を行い、講演する機会がありました。1月の『在宅医療研究会「嚥下障害」』と2月の『阪神南摂食嚥下障害対策ネットワーク構築フォーラム』です。いずれの勉強会も各種の医療スタッフの関心が高く、医師・歯科医師以外に多数の看護師、言語聴覚士、ケアマネジャー、ヘルパーなどが参加されました。

 『在宅医療研究会』は、昨年からスタートとした研究会で、今回が第3回目になります。初回から「嚥下障害」を連続してテーマに取り上げて開かれており、今回はこれまでで最多の150余名の出席者を数えました。今回の内容は、私が「神経難病と嚥下障害」、神戸市立西市民病院歯科衛生士の上原弘美先生が「嚥下障害患者への効果的な口腔ケア」、明和病院内科医長の岸 清彦先生が「胃瘻造設と管理について」の3演題でした。

私は、神経難病の概略を説明した後に、なかでも比較的頻度の多い疾患であるパーキンソン病(PD)、脊髄小脳変性症(SCD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の3疾患について病態と嚥下障害の特徴を解説しました。これらの疾患は一般的にはあまりなじみのない疾患ですが、いずれも厚生労働省の特定疾患として医療費公費負担となっている神経難病です。ちなみに、これらの疾患の兵庫県における特定疾患医療受給者証の交付件数(平成14年度)は、PDが3542件(PDでは特定疾患の認定は中等症以上のみ)、SCDが998件、ALSが330件となっています。

『阪神南摂食嚥下障害対策ネットワーク構築フォーラム』は、兵庫県下の各地区で行われている“地域での摂食・嚥下障害対策のネットワーク作り“の一環として、西宮市・尼崎市・芦屋市の医療関係者を対象に行われました。会場の都合で定員は300名でしたが、それを上回る数の事前の申し込みがあり、一部の方には参加をご遠慮いただくほどの盛況ぶりでした。私は、「摂食嚥下障害をとりまく問題点」として基調講演を行った後に、引き続いて事例発表とパネルディスカッションにも参加しました。

このフォーラムには前記の3市の医師会、歯科医師会、薬剤師会をはじめ、兵庫県の介護福祉士会、栄養士会、介護支援専門員協会、歯科衛生士会、看護協会、言語聴覚士会などからもパネリストが出席しましたので、各方面からの多彩な意見の交換があり、私自身も大変勉強になりました。尚、これらの講演の要旨は当院のホームページにありますので、ご興味のある方はご覧になってください

 

  昨年経験した神経内科の病気あれこれ(神経疾患シリーズ)西宮市医師会報「談話室」2004年1月号掲載

つちやま内科クリニック 土山雅人

 2003年に当院で経験した神経内科の病気のいくつかを紹介します。

◎一過性全健忘(transient global amnesia:TGA)

 「昨日のことが思い出せない」とのことで、中年の女性が家族に付き添われて来院されました。これまで心身とも健康で病院とは縁のない生活を送っていた方ですが、 来院前日の昼過ぎから急に「今日は何日?」、「自分は朝から何していた」と何回も同じことを口走るようになりました。翌朝には日時や場所の見当はつくようになりましたが、昨日の昼頃から夜寝るまでの間の記憶がないことに気がつきました。診察時には神経学的な異常所見はなく、特徴的な健忘症状から一過性全健忘と呼ばれる病態が考えられました(後日行った頭部MRIに異常はありませんでした)。

 TGA(Fisher & Adams,1956)は中高年に見られることの多い、一過性の純粋健忘発作をきたす症候群です。記憶の障害、特に発作時からの新たな記憶の形成障害(前 向健忘)と発作前の一時期の記憶の想起障害(逆行健忘)を生じ、発作中は何回も同じ質問を繰り返します。ほかには神経学的異常はなく、日常的な生活行為は正常に行えます。数時間から24時間程度で自然に回復しますが、発作の直前から発作中の記憶は永続的に脱落します。原因としては海馬を中心とした部位の血流障害説やてんかん性の機序などが考えられています。

◎むずむず脚症候群

 ある地域情報誌に私が連載しているコラムでむずむず脚症候群を取り上げたところ、数年前から全く同様の症状が起こり不眠で悩んでいる中年の女性が相談に来られ ました。そのコラムの内容は以下のとおりです。

 不眠の原因のひとつとして、下肢にむずむずした感じがして眠れないと言う場合があります。これは以前から欧米では「restless legs syndrome」と呼ばれていた病気 で、最近では日本でも「むずむず脚症候群」として注目されています。年齢や性別に関係なく人口の5%程度にみられるとされていますが、高齢者や妊婦により多いようです。これを疑うポイントは、
/夏りばなにふくらはぎを中心に「虫が這うような」あるいは「カッカッとほてるような」異常感覚が起こる、
脚を動かしたり歩き回ったりするとこの「むずむず感」は軽くなるが、安静にすると強くなる、
このため夜間に熟睡できないので、日中に眠気がしたり気分がふさぎ込むようになる、
い覆には寝ている間に足指や足首がピクピクと勝手に動くひともいます。

今のところ詳しい発症の原因は不明ですが、ビタミン、ミネラルの不足、アルコール、カフェインなどの摂りすぎがきっかけとなることがあり、貧血、腎不全、パーキンソン病などに伴って起こる場合も報告されています。対応はひとによって異なります。入浴、マッサージ、湿布などで軽くなることもありますが、程度によっては投薬による治療を考えます。

本例ではクロナゼパムを投薬したところ症状は著明に改善し、夜もよくやすめるようになりました。

◎脊髄小脳変性症に対する磁気刺激療法

 患者さんは発症から数年経過した脊髄小脳変性症(OPCA型)の中年男性です。運動失調による歩行障害がありますが、まだ何とか独歩可能な状態です。当院に紹介 受診された際に患者さんから磁気刺激療法の希望が出されました。脊髄小脳変性症に対する磁気刺激療法はまだ一般的に認知された治療法ではありません。たまたま以前に出席した研究会で日本ではK大学神経内科がこの治療法に積極的に取り組んでいることを聞いていましたので同大のN助教授に連絡を取り、患者さんから了解を得た上で臨床治験の一環として施行してもらうことになりました。

 この治療法は入院の上で数十回にわたって頭蓋外から非侵襲的に磁気刺激を加えるものです。もちろん治療と言っても変性・脱落した神経細胞が復活することは期待で きませんのでその効果も限られますが、運動失調症状が一時的にも軽減する場合があります。本例では失調症状の評価スコアで症状の改善が確認され、これは本刺激の前に行った偽刺激(sham刺激)との比較でも有意な効果でした。ただし本人の自覚症状には大きな変化はなかったようです。

 脊髄小脳変性症は現在全国で2万人以上の認定患者が存在する神経難病です。治療薬としては内服薬のタルチレリンや注射薬の酒石酸プロチレリンなどがありますが、 根本的な治療薬ではありません。最近は遺伝子レベルでの病態の解明が進められているものの、画期的な治療薬が開発されるにはまだかなりの時間が必要です。今回の磁気刺激療法に関しても対症療法の域を出ませんが、有効な治療法が限られている神経難病患者さんにとっては、たとえ一時期でも神経症状の改善が見られるとなれば大きな福音となるでしょう。

 磁気刺激療法はパーキンソン病などのいくつかの神経難病にも試みられています。また、種々の神経難病においてもそれぞれに治療薬・治療法が開発されています。神 経内科医は「分からない、治らない、でもあきらめない」の精神で常に診療に取り組んでいます。

 

  パーキンソン病の鑑別診断(神経疾患シリーズ)、西宮市医師会報「談話室」2003年12月号掲載

つちやま内科クリニック 土山雅人

 先月、ある研究会で表題の内容の発表をしました。その発表内容です。
 パーキンソン病(PD)は人口10万人あたり100人程度の患者がいるとされる神経変性疾患で、今後の社会の高齢化とともにさらに患者数の増加が見込まれています。パーキンソン症状(振戦、無動、筋固縮、姿勢反射障害など)はPD以外のいくつかの疾患でもみられることがあり、パーキンソン症状を呈する患者の鑑別診断は臨床上重要な事項です。三重大学神経内科・葛原教授によると、パーキンソン症状を主訴に来院した患者のうちでPDであった者は6割程度にとどまるとのことです(他は、脳血管性パーキンソン症候群17%、薬剤性パーキンソン症候群13%、など)。

 PDの診断は詳細な病歴の聴取と神経学的診察による臨床的なアプローチによって行われます。画像診断などの補助検査は二次性パーキンソン症候群の除外のために必要とされますが、これも臨床的にあらかじめ鑑別すべき疾患を考えた上で適切な検査法を選択する必要があります。これまでに経験した二次性パーキンソン症候群の4例をもとにパーキンソン病の鑑別診断について考えてみます。

 症例1:カルシウム拮抗薬服用中にパーキンソン症状を呈した症例(兵庫医学雑誌.掲載予定)。本例では塩酸ベニジピンの長期服用中にパーキンソン症状を呈しましたが、中止後1ヶ月で症状は著明に改善しました。カルシウム拮抗薬による薬剤性パーキンソン症候群は、塩酸フルナリジンやシンナリジンが発売中止になってからは稀になり、今では散発的に報告がある程度です。現在では消化器領域でよく使われるベンザミド系薬物(スルピリド、メトクロプラミドなど)による症例が増えているようです。

 症例2:脳原発悪性リンパ腫によるパーキンソン症候群(兵庫医学雑誌45:40−42,2002)。本例は両側の基底核部の浸潤性腫瘍の症例です。このような症例も稀ですが(前述の薬剤性の場合も含めて)週から月単位でパーキンソン症状が進行する場合には、二次性パーキンソン症候群の場合が多いので要注意です。

 症例3:線条体黒質変性症(SND)に伴うパーキンソン症候群。本症に限らず、進行性核上性麻痺、皮質基底核変性症、脊髄小脳変性症などの各種の神経変性疾患でもパーキンソン症状がみられます。極く初期の頃は臨床的な鑑別は困難ですが、抗パーキンソン病薬の反応性や各々に特徴的な神経学的所見が診断のヒントになる場合があります。最近では高解像能のMRIやSPECT、あるいは遺伝子診断などにより比較的早期から鑑別ができるようになってきました。パーキンソン病の特定疾患の申請の際に、これらの疾患についての記載を求められることがありますので、それぞれの臨床像のアウトラインを知っておく必要があります。

 症例4:正常圧水痘症(NPH)に伴うパーキンソン症候群。典型例ではNPH自体の診断はCTでも十分可能です。自験例では髄液短絡(シャント)手術により、パーキンソン症状や痴呆症状が明らかに改善しました。シャント手術がどれくらい有効であるかの事前の予測はなかなか困難ですが、症例によっては確かに効果があります。最近では、腰椎腹腔シャント術のように低侵襲の方法による手術も行われています。 この他にもパーキンソン病の診断をくだす際には、鑑別すべき疾患は多々あります。また、甲状腺機能低下症やうつ病など神経疾患以外にも除外すべき疾患があります。

 

  脳卒中と嚥下障害(神経疾患シリーズ)、西宮市医師会報「談話室」2003年9月号 掲載

つちやま内科クリニック 土山雅人

 先日、在宅医療に関する研究会を行いました。8月の最後の土曜日の午後でしたが、医師、歯科医師、訪問看護や介護関係の各職種の方々、総勢122名が集まりました。嚥下障害をメインテーマとして、在宅歯科診療や嚥下食の配食サービスなどの話題が取り上げられました。私は表記の演題名で講演しましたので、その内容の一部を紹介します。

 脳卒中による嚥下障害は延髄にある嚥下中枢の病変の有無により、球麻痺型嚥下障害と偽性(仮性)球麻痺型嚥下障害に大別されます。前者の嚥下中枢の損傷に伴う球麻痺型嚥下障害では嚥下反射が消失(ないしは高度に障害)しているのに対して、後者の偽性(仮性)球麻痺型嚥下障害では嚥下中枢は損傷されていないために嚥下反射が保たれているのが特徴です。

 各々の病態についてもう少し詳しく解説します。「球麻痺型」嚥下障害は、脳幹梗塞の急性期に病院での対応が問題になることが多い障害です。嚥下中枢は、脳幹下部の延髄の孤束核から疑核にいたる範囲に幅広く存在するニューロンの機能的な集合体です。「球麻痺型」嚥下障害ではこの嚥下中枢の病変により嚥下反射が障害されます。嚥下反射の惹起不全、口腔・鼻腔の閉鎖不全、咽頭管の収縮不良、舌骨の挙上困難、食道入口部の開大障害などが複合的に原因して重度の嚥下障害を呈します。嚥下障害の改善には言語聴覚士(ST)などによる専門的な嚥下訓練が望まれます。延髄外側部の脳梗塞(ワーレンベルグ症候群など)では、嚥下中枢を含む範囲に病変が生じ嚥下障害がよく見られます。同時に感覚障害、運動失調、めまいなどの神経症状をきたすことが多く、ADLの障害も高度のケースが少なくありません。
 偽性(仮性)球麻痺型嚥下障害は、在宅の脳卒中患者にも見られることの多い障害です。主として咀嚼(準備期〜口腔期)にかかわる筋肉の協調的な運動が障害されるため、適切な食塊の形成が困難、咀嚼中にも咽頭部に食塊がこぼれ落ちる、咽頭部への食塊の送り込みがぎこちないなどの支障が生じます。偽性(仮性)球麻痺型嚥下障害は主たる病変の局在により次の三型に分けることができます。
“藜繊θ藜漸七拭脳の表面に近いところに比較的大きな病変をきたしたケースでは、咀嚼や嚥下の運動が障害されると同時に、合併する高次脳機能障害(失語、失行、失認、痴呆など)が摂食・嚥下に影響している場合が多く見られます。実際の嚥 下機能を評価・訓練する以前に、集中力に欠ける、指示が入らない、学習効果がない、食べるための訓練の意義が理解できない・・などの問題が起こります。個々の患者の高次機能障害に応じた対応(会話が通じないのは、失語のためなのか?痴呆のためなのか?・・)が必要になります。
内包・基底核部型:両側の内包・基底核部の多発性小病変(多発性のラクナ梗塞など)による場合です。口部、舌、咽喉頭部などの筋肉を動かしている錐体路や錐体外路が部分的に障害されるために、咀嚼運動や舌の動きが遅延し、嚥下反射のスピードも落ちます。血管性パーキンソン症候群を伴うことが多く、その場合には動作緩慢、歩行障害、姿勢保持反射の不良などの身体の運動機能障害も見られます。
G彰(橋・中脳)型:延髄より上部の脳幹の病変の場合です。脳幹は狭い部分に多くの重要な神経組織が存在しているので、比較的小さな病変でも重度の偽性球麻痺を呈します。病変が脳神経核や錐体路、小脳などにもおよんで座位保持や実用的な動作が困難なADLレベルの低いケースも少なくありません。嚥下中枢に病変がおよんだ場合には球麻痺の要素(嚥下反射自体の障害)も含まれます。

 嚥下障害の患者さんには医師による診療が必要ですが、在宅での日々のケア(食事の介助、水分の補給・・)には看護や介護の方々の適切な対応が不可欠で各職種によるチームアプローチが重要になります。お互いのよりスムーズな意思の疎通を図るためにも、多職種が一堂に会して勉強していく場をこれからも続けていきたいと思います。

 

  当院における在宅神経難病患者の検討 −訪問診療開始から14ヶ月間のまとめ−  (神経疾患シリーズ)、西宮市医師会報「談話室」2003年11月号掲載

つちやま内科クリニック 土山雅人

 10月5日に兵庫県プライマリ・ケア協議会の主催で「日本プライマリ・ケア学会第17回近畿地方会/兵庫県プライマリ・ケア協議会第1回研究会」が開かれました。西宮市医師会からは西本洋二先生が口演発表されました。筆者はポスターセッションに表記の演題を発表し、そのセッションの座長も勤めました。筆者の担当したセッションは「在宅医療」や「地域ケア」に関連した内容で、医師、薬剤師、訪問看護師などの多職種から発表が計10演題ありました。昨年の神戸での「日本プライマリ・ケア学会in神戸」でも同じように演者兼座長を勤めましたが、その時とはまた一味違って今回は自分の在宅診療の経験からも実感できる話題ばかりでした。学会自体は内容があまりにも豊富で、いくつかの興味ある発表を聞き逃したのが残念でした。

 筆者の発表内容の要旨は以下のとおりです。当院は01年10月に新規開院した無床診療所(医師1名:日本神経学会専門医)である。02年7月から訪問診療を始めたが,これまでの14ヶ月間に経験した在宅神経難病患者について検討した。この間に訪問診療を行った患者総数は18例,そのうち12例が神経難病患者であった。疾患の内訳は,パーキンソン病(PD)5例,脊髄小脳変性症(SCD)3例,筋萎縮性側索硬化症(ALS)2例,多発性硬化症(MS)1例,進行性核上性麻痺(PSP)1例。訪問診療開始の時点で経鼻胃管1例(PSP),胃瘻(PEG)1例(PD)。観察期間中に3例(PD1例,SCD2例)に新たなPEG造設がなされた。死亡は1例(ALS:肺炎)。現在、入院中が2例(SCD:誤嚥性肺炎で気管切開施行、PD:舌根沈下により上気道閉塞)、施設入所中が1例(PD:老老介護による介護力低下)。神経難病では経過とともに運動機能が低下するが,とりわけ嚥下機能の障害は生命予後に直接関与する重要な要因である。

 在宅神経難病患者の問題点については、次の3点を述べました。
ー栖気砲弔い
・神経難病(特に変性疾患)=「亜急性の進行性疾患」の認識を持って取り組むことが必要。
・運動障害、なかでも嚥下障害(脱水や嚥下性肺炎を含む)への対応が問題。
病診連携について
・病院・診療所を問わず「神経内科」専門施設の不足。
・在宅への移行の前に、地域の主治医との事前の調整(患者側への説明、将来の見通し、病状進行時や緊急時の対応など)に十分な時間をかけることができるか?
・病状が末期に至り、在宅の継続が困難になった場合の対応をどうする?
在宅ケアの連携について
・看護・リハビリ・介護・福祉などの各職種の連携とリーダーシップのとり方。
・医学知識を基にした各職種の技術力の向上をはかる。

 最後に在宅神経難病に関連して、現在行われつつある取り組みのいくつかについて、問題点の指摘を含めて紹介しました。
(叱妨による『神経難病医療ネットワーク』事業
・「行政→拠点病院→専門・一般協力病院/診療所→関係機関」の縦のつながりを、地域の実情に応じてどのように展開するか?
・「患者会」との連携は?
∧叱妨による『摂食嚥下障害対策ネットワーク』事業
・神経難病に限らず摂食嚥下障害全般に対して、各職種が連携して取り組める仕組み作り。
・県下の各地区ごとでネットワーク構築の試み:阪神南地区(尼崎・西宮・芦屋)の第1回フォーラム開催は16年2月の予定。
西宮での『在宅医療研究会』開催
・「嚥下障害」を主題に4月(参加129名)、8月(同124名)に開催、次回は16年1月の予定。
・この分野についての医師、歯科医師の関心はまだ高いとは言えない。

 

  脳卒中と嚥下障害(神経疾患シリーズ)、西宮市医師会報「談話室」2003年9月号 掲載

つちやま内科クリニック 土山雅人

 先日、在宅医療に関する研究会を行いました。8月の最後の土曜日の午後でしたが、医師、歯科医師、訪問看護や介護関係の各職種の方々、総勢122名が集まりました。嚥下障害をメインテーマとして、在宅歯科診療や嚥下食の配食サービスなどの話題が取り上げられました。私は表記の演題名で講演しましたので、その内容の一部を紹介します。

 脳卒中による嚥下障害は延髄にある嚥下中枢の病変の有無により、球麻痺型嚥下障害と偽性(仮性)球麻痺型嚥下障害に大別されます。前者の嚥下中枢の損傷に伴う球麻痺型嚥下障害では嚥下反射が消失(ないしは高度に障害)しているのに対して、後者の偽性(仮性)球麻痺型嚥下障害では嚥下中枢は損傷されていないために嚥下反射が保たれているのが特徴です。

 各々の病態についてもう少し詳しく解説します。「球麻痺型」嚥下障害は、脳幹梗塞の急性期に病院での対応が問題になることが多い障害です。嚥下中枢は、脳幹下部の延髄の孤束核から疑核にいたる範囲に幅広く存在するニューロンの機能的な集合体です。「球麻痺型」嚥下障害ではこの嚥下中枢の病変により嚥下反射が障害されます。嚥下反射の惹起不全、口腔・鼻腔の閉鎖不全、咽頭管の収縮不良、舌骨の挙上困難、食道入口部の開大障害などが複合的に原因して重度の嚥下障害を呈します。嚥下障害の改善には言語聴覚士(ST)などによる専門的な嚥下訓練が望まれます。延髄外側部の脳梗塞(ワーレンベルグ症候群など)では、嚥下中枢を含む範囲に病変が生じ嚥下障害がよく見られます。同時に感覚障害、運動失調、めまいなどの神経症状をきたすことが多く、ADLの障害も高度のケースが少なくありません。
 偽性(仮性)球麻痺型嚥下障害は、在宅の脳卒中患者にも見られることの多い障害です。主として咀嚼(準備期〜口腔期)にかかわる筋肉の協調的な運動が障害されるため、適切な食塊の形成が困難、咀嚼中にも咽頭部に食塊がこぼれ落ちる、咽頭部への食塊の送り込みがぎこちないなどの支障が生じます。偽性(仮性)球麻痺型嚥下障害は主たる病変の局在により次の三型に分けることができます。
“藜繊θ藜漸七拭脳の表面に近いところに比較的大きな病変をきたしたケースでは、咀嚼や嚥下の運動が障害されると同時に、合併する高次脳機能障害(失語、失行、失認、痴呆など)が摂食・嚥下に影響している場合が多く見られます。実際の嚥 下機能を評価・訓練する以前に、集中力に欠ける、指示が入らない、学習効果がない、食べるための訓練の意義が理解できない・・などの問題が起こります。個々の患者の高次機能障害に応じた対応(会話が通じないのは、失語のためなのか?痴呆のためなのか?・・)が必要になります。
内包・基底核部型:両側の内包・基底核部の多発性小病変(多発性のラクナ梗塞など)による場合です。口部、舌、咽喉頭部などの筋肉を動かしている錐体路や錐体外路が部分的に障害されるために、咀嚼運動や舌の動きが遅延し、嚥下反射のスピードも落ちます。血管性パーキンソン症候群を伴うことが多く、その場合には動作緩慢、歩行障害、姿勢保持反射の不良などの身体の運動機能障害も見られます。
G彰(橋・中脳)型:延髄より上部の脳幹の病変の場合です。脳幹は狭い部分に多くの重要な神経組織が存在しているので、比較的小さな病変でも重度の偽性球麻痺を呈します。病変が脳神経核や錐体路、小脳などにもおよんで座位保持や実用的な動作が困難なADLレベルの低いケースも少なくありません。嚥下中枢に病変がおよんだ場合には球麻痺の要素(嚥下反射自体の障害)も含まれます。

 嚥下障害の患者さんには医師による診療が必要ですが、在宅での日々のケア(食事の介助、水分の補給・・)には看護や介護の方々の適切な対応が不可欠で各職種によるチームアプローチが重要になります。お互いのよりスムーズな意思の疎通を図るためにも、多職種が一堂に会して勉強していく場をこれからも続けていきたいと思います。

 

  第39回神戸市難病団体連絡協議会主催「医療・生活・教育」相談会に参加して(神経 疾患シリーズ)、西宮市医師会報「談話室」2003年8月号掲載)

つちやま内科クリニック 土山雅人

 6月22日に表記の相談会に講師のひとりとして初めて参加しました。相談会全体では神経難病を含めた各種難病の患者・家族の方々が、神戸市のみならず県の内外を含めて全体で366名が参加されました。

 私はパーキンソン病の医療相談を担当して、30分ほど病気の概説をした後に1時間半以上にわたって質疑応答を行いました。パーキンソン病の部門の出席者は全部で30-40名ほどでした。患者さんの多くは長年ドーパ剤などの抗パーキンソン病薬を飲んでおられるので、薬の効果減弱や不随意運動・精神症状の対応など、答えに窮する質問が多々ありました。また、最新の医療として手術療法(これは参加者の中に手術体験者がおられたので、実情をお話いただきました)や遺伝子治療などについても興味をもって質問される方がおられました。

 なかには各科の医療機関でいくつもの薬が出るために、似たような効用の薬も含めて毎食後に十個以上の薬剤を服用している方もおられました。各科の主治医になかなか薬の整理をお願いすることができないので困っているとのことでした。患者本位の医療が叫ばれていますが、現実にはそれぞれの医療機関を上手に調整する機能が働いていない事例は少なくないようです。このような患者の不利益は、医療、看護、介護などの各分野にわたって多々あることと思います。今回は診察室以外で患者さんからの生の声を聞いて、いろいろと考えさせられました。

 10月からは国の難病対策の仕組みが一部変更されます。すなわち段階的な一部自己負担が導入され、今回は19種類の難病患者のうちで一定の基準を満たした「軽快者」については、患者さんの自己負担が増加することになります(詳細は「難病情報センタ−」のホームページを参照)。制度の変更に伴って難病医療の現場では混乱が心配されると同時に、これからますます医療者のきめこまやかな対応が必要になると思われます。

 

  延髄外側梗塞と嚥下障害(神経疾患シリーズ)(西宮市医師会報「談話室」7月号掲載)

つちやま内科クリニック 土山雅人

 5月24日の第3回臨床リハビリテーションセミナーで表題の講演を行いました。その 一部を紹介します。

  延髄は脳幹下部に位置し、橋と頚髄までの間の約2.5cmの部分です。このなかに複数の脳神経核や循環・呼吸・消化などの生命活動の維持に必要な神経機能の中枢組織が存在します。摂食・嚥下機能に関しては、疑核や孤束核、延髄網様体を中心とした嚥下中枢があり、口腔期から食道期をつなぐ咽頭期の反射運動(嚥下反射)をコントロールしています。

 脳幹部は椎骨脳底動脈系からの血流を受けています。嚥下中枢がある延髄背外側部は主に後下小脳動脈の長周辺枝により支配されています。延髄の血管分布にはバリエーション多く、梗塞の広がりや経過に個人差が大きいのが特徴です。嚥下障害をきたす延髄梗塞としてワーレンベルグ症候群が有名です。これは椎骨動脈(あるいは後下小脳動脈)の閉塞により、延髄背側外側部の三叉神経脊髄路、三叉神経脊髄路核、外側脊髄視床路、疑核、孤束核、前庭神経核、下小脳路脚、交感神経下 降路などが同時に障害されたもので、患側の顔面感覚障害、反対側の体幹感覚障害、患側の軟口蓋・咽頭喉頭の運動麻痺と感覚障害、回転性めまい、運動失調、ホルネル症候群などを呈します。MRIで延髄外側梗塞の広がりを検討した報告では、吻側の延髄病変では嚥下障害、嗄声、顔面麻痺などがよくみられ、尾側の病変ではめまい、眼振、失調性歩行の頻度が高いようです。

 ワーレンベルグ症候群の発症初期には60〜70%の高率に嚥下障害を伴うと言われています。本症の嚥下障害は、嚥下中枢の損傷により嚥下反射が惹起されないために生じます(「球麻痺」型嚥下障害)。この嚥下障害は多くの場合、数週間から数ヶ月で改善するとされていますが、咽頭喉頭部の感覚障害や食道入口部開大不全なども加わり重度の嚥下障害をきたす場合もみられます。

 筆者が参加した阪神間の4病院によるワーレンゲルグ症候群の嚥下障害に関する共同研究(第7回日本摂食・嚥下リハビリテーション学会、2001)では、以下の臨床的特徴が判明しました。(1)ワーレンベルグ症候群における嚥下障害の多くは1ヶ月前後で改善する。(2)嚥下障害が遷延するケースでも、回復の兆しが見えた場合には2ヶ月程度で良好な改善が見られる。(3)発症後6ヶ月を過ぎても、嚥下機能が改善するケースが存在する。(4)嚥下障害の予後予測は困難で、嚥下障害の長期経過例における一律的な対応は難しい。(5)食道入口部開大不全に対するバルーン拡張法の有効性は、確認できなかった。

 

  日本神経学会「治療ガイドライン」について(神経疾患シリーズ)(西宮市医師会報「談話室」、2003年6月号掲載)

つちやま内科クリニック 土山雅人

 日本神経学会は、神経内科を専門としている医師を中心とした9000人規模の学会です。昨年から代表的な神経疾患のいくつかを取り上げて、その治療のガイドラインを発表していますのでご紹介します。

 このガイドラインは神経学会の会員向けに作られたものですので、学会誌の「臨床神経学」に載せられています。いままでに、『慢性頭痛』(42巻4号)、『パーキンソン病』(42巻5号)、『てんかん』(42巻6号)、『筋萎縮性側索硬化症(ALS)』(42巻7号)、『痴呆性疾患』(42巻8号)の5つの疾患の治療ガイドラインが発表されました。これらのガイドラインの内容を知りたいと思われる方は、当方までご連絡ください。このほかに『脳血管障害』については他学会とも協同して現在作成中とのことです。

 神経疾患の多くは長期の経過をとるために、同一の疾患でも経過によって病像が変化することがあります。また、個々の患者をとりまく社会的、家族的な背景によっても医療的な対応が異なる場合があります。このガイドラインはこのような神経疾患の特性を踏まえて作られていますので、診断名に対してもちいる薬物が自動的に決まるといった画一的な治療指針を示したものではありません。主治医が神経疾患の患者の治療法を決定するための基礎資料として参考にできるように、その疾患の治療薬や非薬物的治療法に関する現状での評価を客観的なデータにもとに記載したものです。すなわち、臨床判断を支援するためのツールとして使われるべきもので、参照文献も豊富に紹介されています。今後は原則として3年ごとに改定される予定です。

 神経疾患はともすれば診断はできても治療法は特にないと思われがちですが、最近では患者さんのQOLの改善に結びつく有効な薬剤がいくつも出てきています。神経疾患と言っても脳卒中や神経難病だけではありません。頭痛、めまい、しびれ、ふるえなどの身近な症状のなかにも治療の対象となる神経疾患が含まれていることも稀ではないと思います。

 

  脳卒中週間と脳卒中予防の十か条(神経疾患シリーズ─法弊承椹坩綮娉駟鵝崔模端次廖2003年5月号掲載)

つちやま内科クリニック 土山雅人

 今年もまた脳卒中週間の頃になりました。昨年の本誌6月号にも書いたように、日本脳卒中協会(http://www.patos.one.ne.jp/public/jsa/index.ssi)では平成14年度から毎年5月の25日から31日を脳卒中週間と定め、脳卒中に関する各種のキャンペーンを行います。今年の標語は「脳卒中予防は日々の暮らしから」です。昨年と同じようにキャンペーン用のポスターも作成されますので、自院で掲示を希望される方は日本脳卒中協会(06-6629-7378)までお申し出ください。この間の市民向けの啓発事業として、「第6回脳卒中市民シンポジウム」が5月24日に大阪国際交流センターで開かれ、脳卒中の治療、予防、リハビリテーションなどについての講演が企画されています。また、同じ24日には私が企画した「第3回臨床リハビリテーションセミナー」(午後2時から、JR尼崎駅北側のホテル「ホップイン」アミングにて)もあります。こちらは医師、リハビリ療法士などを対象にしたもので、内容は以下の通りです。講演1:高齢者におけるせん妄(大阪厚生年金病院神経精神科 池澤浩二)、講演2:延髄外側梗塞と嚥下障害(つちやま内科クリニック 土山雅人)、特別講演:脳卒中における神経リハビリテーションの実際(ボバース記念病院院長 宮井一郎)。ご興味のある方はぜひお越しください。日本脳卒中協会は今年2月に脳卒中予防のための十か条を作りましたので、その十か条を引用してみます。ー蟷呂瓩帽盞谿気ら治しましょう 糖尿病、放っておいたら悔い残る I埓位、見つかり次第すぐ受診 ね祝匹砲魯織丱海鮖澆瓩覦媚廚鮖て ゥ▲襯魁璽襦控えめは薬、過ぎれば毒 高すぎるコレステロールも見逃すな Г食事の塩分・脂肪控えめに 体力に合った運動続けよう 万病の引き金になる太りすぎ 脳卒中、起きたらすぐに病院へ。このほかにも、特に夏場に汗をかいて脱水状態になると血液の流れが悪くなり脳梗塞を起こしやすくなるので、水分補給を心がけることも重要です。

 

  嚥下障害の基礎知識(神経疾患シリーズА(西宮市医師会報「談話室」、2003年4月号掲載)

つちやま内科クリニック 土山雅人

 今年になって上記の題名で2箇所で講演する機会がありました。2月の大阪狭山市 での大阪府老人性痴呆疾患センター事業研修会と4月の西宮市での在宅医療研究会です。そのなかで話した、《摂食嚥下の常識?・非常識?》をご紹介します。

 ◆『毎日食事をしている人には、嚥下障害はない』??

⇒十分な量の栄養や水分が安全に摂取できているかを考える。臨床の現場で、嚥下障害を疑うポイントとして、,爐擦襦´⊃事に時間がかかる 食事の好みが変わった た欲低下、脱水症状、体重減少 タ後に声が変わる Τ韻籬發多い、時折熱が出る などに注意する必要がある。

 ◆『特に脳卒中などの既往はないので、嚥下障害はない』??

⇒摂食嚥下機能も老化や廃用によるしだいに障害が起こる。特に加齢による摂食嚥下機能の低下の要因としては、〇牙の欠損による咀嚼力の低下 嚥下に関与する筋の筋力低下 B単佞慮詐や味覚の低下 す頭の位置が下がり、嚥下反射の際の喉頭挙上が不十分 デ承’縦祺爾砲茲訖牲亠’修料竿姪な不活性化 などが挙げられる。

 ◆『喉の動きに異常ないので、摂食や嚥下に問題はない』??

⇒嚥下は運動神経の働きだけでなく、口腔や咽喉からの感覚入力や大脳レベルの高次機能によってもコントロールされている。例えば、口腔の麻酔をした状態ではうまく食べられない、風邪を引いて臭いがしなくなると食べる気がしない、嫌いなものは努力しないと飲み込めない・・など。

 ◆『誤嚥すると、むせて咳き込む』??

⇒特に高齢者になると「むせのない誤嚥(silent aspiration)」は稀ではない。明らかな誤嚥以外にも、気づかないうちに少量の口腔・喉頭の内容物を吸引したり、胃内容物が逆流して肺に流入することもしばしばみられる(micro aspiration)。

 ◆『誤嚥してしまうと、肺炎になる』??

⇒健常人でも睡眠中などに不顕性誤嚥は生じているが、気道粘膜の線毛運動や咳嗽、免疫機構などの働きによって、通常は肺炎を発症しない。これらの防御機構の低下している場合には肺炎を生じるリスクが高くなる。嚥下性肺炎は3000例の高齢者剖検肺の6.7%(松瀬、1997)、189例(60歳以上の入院・外来・施設入所患者)を4年間追跡し41例(21.7%)に見られた(Langmoreら、1998)との報告がある。特殊な嚥下性肺炎として、Mendelson症候群やびまん性嚥下性細気管支炎などがある。前者は、大量の胃内容物の誤嚥により、胃液(胃酸)による化学性肺臓炎を生じるもの。気管支の攣縮や食物残渣による気道閉塞、細菌性肺炎も加わり、重篤な肺炎が起きる。後者は、少量の誤嚥を頻回に繰り返す患者に稀にみられるもので、喘鳴や発作性呼吸困難を呈し、気管支喘息との鑑別を要する。胸部レ線で小結節影の散布が特徴的。

 ◆『誤嚥がある場合には、食事は止める』??

⇒口から食べる楽しみ、経口摂取できなくなった場合の失意と現実に生じる低栄養、脱水、誤嚥、窒息などのリスクに関して、どうバランスをとるか? 個々の患者の条件(原疾患の性質、障害部位、本人の理解・意欲など)と患者を取り巻く要素(介護力や支援状況、治療スタッフの能力など)によって対応は異なる。多職種も含めたチームとしての取り組みが必要。

 

  パーキンソン病とイレウス(神経疾患シリーズΑ法弊承椹坩綮娉駟鵝崔模端次廖2003年3月号掲載)

つちやま内科クリニック 土山雅人

 先日の第4回兵庫パーキンソン病治療研究会で「イレウスを繰り返したパーキンソン病の1例」として自験例を発表しました。今回はその内容を紹介します。パーキンソン病(PD)は自律神経障害の一環としてしばしば消化管運動障害を伴います。慢性便秘はPD患者の大多数にみられますが、その他にも頻度的には少ないものの、重篤な合併症として巨大結腸や麻痺性イレウス、腸捻転などをきたすことがあります。筆者は開腹歴のあるPD患者でPD発症十数年を経てからイレウスを頻回に繰り返すようになった症例を経験しました。

 症例は71歳の男性です。50歳時に手指振戦、動作緩慢で発症し、近医でPDと診断され治療が開始されました。51歳時にイレウスで計3回の開腹術を受けているとのことですが、その詳細は不明です。60歳時からはS市立病院神経内科に通院し加療されていました。その後もPDの進行は比較的緩徐で、抗パ剤を適時増量することによりヤール掘糞’重障害は軽〜中等度で、日常生活は自力で可能)の状態で維持されていました。この間、66歳時に癒着性イレウスを発症したのを皮切りに、演者が外来主治医であった5年弱の間に9回のイレウス(癒着性1回、麻痺性2回、S状結腸軸捻6回)を繰り返しました。その都度イレウスチューブ挿入や大腸ファイバーでの整復などで対応しました。主治医交代後も同様の状態を繰り返していましたが、数年後にイレウスに伴う汎発性腹膜炎で死亡しました。

 PDでは経過を通じて大腸の蠕動運動が低下しています。PD初期にみられる便秘は腸管の機能異常による影響が大きいので抗パ剤に反応することが多いのですが、PDの経過とともに結腸の拡大や延長などの腸管の器質的異常が生じて抗パ剤の反応性は乏しくなります。病理学的検討でも腸管のアウエルバッハ神経叢に中枢神経系に出現するのと同様のレビー小体が認められるなど、腸管神経系にも病的変化が生じることが報告されています。腸管の器質的な変化が進むと、麻痺性イレウス以外に今回みられたようなS状結腸軸捻などの閉塞性イレウスを起こす危険が高まります。その対応には腸管切除などの外科的治療も考慮されますが、臨床場では難渋することが多いのが実情です。

 

  筋萎縮性側索硬化症 −難病対策講習会に出席して− (神経疾患シリーズァ
(西宮市医師会報「談話室」、2002年2月号掲載)

つちやま内科クリニック 土山雅人

 昨年、西宮市保健所で2回にわたり難病対策講習会が開かれました。今回は代表的な神経難病である筋萎縮性側索硬化症(ALS)が取り上げられ、訪問看護ステーションや病院などの看護師を始めとして各種の医療職が各回30名前後参加し活発な討議が行われました。10月の1回目では、独自のALSの在宅支援システムを構築している公立八鹿病院の近藤清彦先生(神経内科部長)から「ALSの病態と在宅支援体制」として、ALSの概説と同院での在宅支援体制のノウハウについて伺いました。12月の2回目では、西宮市保健所や地域の医療機関から当地における地域支援体制の取り組みや自験例の紹介などが行われました。席上、医師会の菊池副会長から現在西宮市内の7箇所の民間病院がALS患者の短期入院制度に協力していることが述べられました。現在の医療保険制度を考えると、このような神経難病患者を短期間とはいえ積極的に受け入れることはなかなか難しい面があります。その中で、公的病院に先駆けて民間病院がその任をはたしていることは各病院の当事者の皆様の見識の高さを示すものと感じました。

 ご承知のように、ALSは運動神経系を選択的に障害する原因不明の変性疾患です。ALSの有病率は人口10万人あたり5-6人(これは脊髄小脳変性症とほぼ同数、ちなみにパーキンソン病は人口10万人あたり100人程度)。男:女は 1.5 : 1 。50歳代半ばの発症が多いですが、患者層は10歳代後半〜80歳代に広く分布しています。そのほとんどは遺伝歴のない孤発例です。西宮市でのALS実態調査によると、平成12年末の時点で特定疾患医療受給者証(総計1800余名)を所持しているALS患者は23名です。アンケート調査に応じた19名(在宅18名、入院1名)の現状としては、痰の吸引が必要=5名、胃瘻造設=4名、気管切開=3名、酸素吸入=2名、人工呼吸器使用=2名、バルーンカテ留置=2名、と医療的介入の必要なケースが多いことが分かります。ALSの自然経過では発症から呼吸不全による死亡まで平均3-4年とされていますが、人工呼吸の普及などにより最近では発症から10年以上経過している症例も少なくありません。今後は高度な医療を要するALS患者がさらに増えるものと思われます。ALS患者のケアには地域における医療・看護と介護・福祉の連携が不可欠です。それには地域の医療圏の特性を踏まえて考えねばなりません。他の地域でのやり方は参考にはなりますが、そのまま通用するものではありません。西宮のような都市部では一定の面積の中に多数の患者と医療・介護施設が混在しています。どのような医療資源をどのように組み合わせて、チームとして対応していくかが問われます。患者支援の核 になる施設は? 誰がチームのリーダーとなるか? 日常のチームの運営やチーム間の連絡調整をどうするか? 等など実際の運用面で解決すべき問題は多岐にわたります。またケアのレベルを上げるには各職種における技能、知識の向上を図る仕組みも不可欠ですし、難病患者の在宅ホスピスケアや患者・家族の精神的ケアなどの未開拓の領域へ踏み込んでいくことも必要になります。私も開業の神経内科専門医としてこれらの問題に積極的に関わっていきたいと思います。

 

  神経内科の病気あれこれ(脳神経疾患シリーズぁ
(西宮市医師会報「談話室」、2002年12月号掲載、一部改変)

つちやま内科クリニック 土山雅人

  今回は開業して1年余りのあいだに当院で経験したいくつかの脳神経疾患を取り上げます。馴染みのない病名が出てくるかもしれませんが、こんな病気もあることを知っているといつか役立つかもしれません・・・

 ◆ 特発性全身性無汗症(第55回兵庫県医師会医学会で発表):
スポーツ部の夏季合宿中に急に全身から汗が出なくなり、うつ熱症状をきたした。急性発症の全身性無汗状態、コリン性蕁麻疹、血清Ig-E高値などから本症(idiopathic pure sudomotorfailure)と診断した。本症は汗腺のコリン系受容体の障害のために発汗障害を来たす、免疫異常の関与した比較的稀な疾患である。ステロイド治療が有効(土山ら:神経内科1997;46:128)であり、本例でもステロイド投与後から速やかに通常の発汗が得られるようになった。

 ◆ 良性急性筋炎:
39度の発熱で受診した。咽頭痛や咳、痰などはなく対症療法で1−2日後には解熱したが、しだいに四肢(特に下肢)の筋肉痛が強くなり、階段の昇降や自転車を漕ぐことが困難になった。血液検査では、CK 1256 IU/l(基準値:24-162)、ミオグロビン1248 ng/ml(18-70)と筋崩壊の所見がみられた。白血球数4900 /μlでCRP 0.2 mg/dlと炎症反応はなく、腎機能にも異常はなかった。本症(benign acute myositis)と診断し補液を追加したところ、しばらくして症状・所見とも改善した。小児ではインフルエンザなどのウイルス感染症の罹患後に下肢を主体とした特徴的な予後良好の筋炎(流行性下肢筋痛症)がみられることが知られている。稀に成人でも同様の症候を呈する本症が報告(土山ら:内科1997;79:997-999)されている。ただしウイルス性筋炎の一部では劇症の経過をとって横紋筋融解症にいたる場合もあり、筆者も急性腎不全から死亡した症例(鵜山ら:内科1990;65:380-382)を経験している。ウイルス感染に関連して筋炎症状を来たした際には十分な経過観察が必要である。

 ◆ 本態性眼瞼攣縮(Meige症候群):
数年前から両眼が勝手に閉じるようになった。特に日中の日差しの強いときや人ごみの中などでは閉眼状態(機能的失明状態)になることがある。閉眼筋が両側性に同期して収縮し頻回な瞬目や眼瞼の攣縮がみられたところから、本症(essential blephalospasm)と診断した。本症は大脳基底核の機能障害による限局性ジストニアの一型である。その発症には感覚入力の役わりが重視されているがいまだ詳細は不明の点が多い。本症の治療には種々の薬物療法や心理療法、手術療法などが行われているが、最近ではボツリヌス毒素の持つ運動神経のブロック作用を利用した治療が注目されている。本例でも兵庫医大眼科に紹介してボツリヌス毒素の局所注射を施行してもらい良好な結果が得られた。

 ◆ ポリオ後症候群:
小児期にポリオに罹患し一肢の麻痺を生じたが、成人後は自立した生活が可能だった。2−3年前から四肢・体幹の筋力低下・筋萎縮が進行し、日常生活に介助を要するようになった。両側性の骨間筋萎縮や上腕から胸部にかけての筋線維束攣縮などを認め、本症(post-polio syndrome)と診断した。本症はポリオ罹患後に長期間の症状不変期を経て、進行性の神経原性筋萎縮などの種々の障害をきたす病態である。その原因としては脊髄運動神経や骨格筋の過用による変性・脱落に加えて加齢や免疫学的機序などの関与が想定されている。一般に進行性の筋萎縮はポリオ罹患肢が主体であるが、本例のように四肢・体幹の広範囲に生じる症例や脳神経症状を呈する症例も散見される。

 ◆ 高齢者の一過性全身性ミオクローヌス(良性一過性身震い様不随意運動):
糖尿病(インスリン自己注射)、アルコール性肝炎で近医に通院中である。起床後より四肢・体幹を不規則に震わせるような不随意運動が出現した。意識は清明で運動麻痺はないが、下肢がガクガクと動くために歩行は不能。発熱なし、血糖値も著変なし。自然経過で約半日あとには神経症状は消失した。特徴的な不随意運動の所見から本症(transient myoclonic state with asterexis in elderly patients)と診断した。本症は慢性疾患を有する高齢者に急性発症する予後良好の不随意運動で、異常運動の主体は大脳皮質性ミオクローヌスとされている(土山ら:老化と疾患1995;8:1644-1646)。本例は自然寛解したが、治療に際してはクロナゼパムの有用性が指摘されている。

 

  興味ある頭痛の3例 −問診の重要性−:脳神経疾患シリーズ
(西宮市医師会報「談話室」、平成14年11月号掲載)

つちやま内科クリニック 土山雅人

 先日、ある研究会で上記の演題を発表しました。今回はその内容をご紹介します。日常診療の場で頭痛の患者を診ることは少なくありません。そのなかには脳腫瘍やくも膜下出血のような重篤な頭蓋内器質的疾患も含まれますが、実際に遭遇する頭痛の多くは機能的な慢性頭痛です。この慢性頭痛は通常直ちに生命に影響することはないために、臨床的にはあまり重要視されない傾向にあります。しかし患者にとっては頭痛は日常生活の障害や仕事の大きな妨げになるので、社会的にも重大な損害がもたらされていると指摘されています。一説によるとわが国の頭痛による経済的損失は1年間で2500億円を上回るとも言われており、実地医家は適切な頭痛の診療を心がける必要があります。

 最近では頭痛の診療においても頭部CTやMRIなどの画像診断を優先する傾向がみられますが、一般に慢性頭痛では画像診断は器質的疾患を除外するという目的以外に積極的な診断的価値はありません。同様に血液・髄液検査や脳波検査などでも異常所見は一部の機能性頭痛を除いて特にありませんので、最も重要な頭痛の診断的アプローチは詳細な問診になります。頭痛は主観的なもので個体差が大きいことを頭に入れて、最低限次のような事柄を聴取します。すなわち、頭痛の頻度、1回の頭痛の持続時間、よく起こる時間帯、痛む場所、痛みの特徴、痛みの程度、発症のタイミングと程度の変化、頭痛以外の特徴的症状、家族歴など内容は多岐にわたります。頭痛を単なる症候として捉えるのではなく、背景に多彩な病態を持った疾患群として認識することが重要です。

 頭痛の問診に際しては、頭痛に関する幅広い知見があるほど内容が充実します。近年片頭痛の治療にトリプタン系薬剤が取り入れられるなど、頭痛診療は日々進歩しています。実地医家のすべてが先端のレベルの知識を持つことは実際的ではありませんが、慢性頭痛のうちでも比較的ポピュラーな片頭痛や緊張型頭痛に関しては、その典型像を理解しておくことが望まれます。最近では日本神経学会から頭痛治療ガイドラインがホームページ上(http://www.neurology-jp.org/guidline/)に発表され、片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛そして薬剤長期乱用に伴う頭痛に関して解説があります。もちろんこれらの他にも慢性頭痛の原因は多々ありますので、頭痛の患者の診療で「頭が痛い」先生は、神経内科や脳神経外科などの脳神経専門医にご相談ください。さて、今回は問診により臨床的に診断を絞り込むことのできた頭痛の3症例を呈示します。いずれも一般的には比較的珍しい原因で起こった器質性もしくは機能性頭痛です。

 症例1(土山ほか:内科84:341,1999)は、特にきっかけなく座位や立位をとると悪心・嘔吐を伴う拍動性頭痛が出現するようになった34歳の女性です。これまで特に頭痛の既往はなく、神経学的にも異常はありません。特徴的な起立性頭痛の状態から原発性低髄液圧症候群を疑い、ガドリニウム増強頭部MRI(Gd-MRI)を行いました。硬膜は全周性に増強効果がみられ、前述の病名に合致する所見でした。本症は髄膜の小さな亀裂から髄液が漏れ出るために起こると言われています。多くの場合は補液などの保存的治療で改善するとされており、本例でも補液を続けることで頭痛は消失し、画像所見も正常化しました。本症では単純MRIでは異常はありませんが、Gd-MRIは特有の所見が得られるので補助診断として有用です。また、髄液検査は髄液圧の低下を助長することがあるので要注意です。

 症例2(土山ほか:内科82:186-188,1998)は、長年にわたって閃輝性暗点を伴う拍動頭痛を繰り返していた44歳女性です。神経学的診察でも特に異常はなく、一見したところでは典型的前兆を伴う片頭痛と思われました。しかし頭痛の部位が毎回一定で前兆と頭痛発作のタイミングが切迫している点がやや非典型的でしたので、画像検査を行ったところ右後頭葉に脳動静脈奇形を認め、脳血管奇形に伴う片頭痛様発作と診断しました。脳動静脈奇形で頭痛を主訴とするものは3%程度と稀ですが報告されています。臨床的に片頭痛と思われる症例でも、いちどは確実に器質的疾患を除外しておく必要があります。

 症例3は、昨夜から後頭部の痛みが出現したのでくも膜下出血を心配して来院した53歳女性です。頭痛の性状からは筋緊張に伴う頭痛でしたが、夜間に急に痛くなったと言う訴えから発症時の状況を確認したところ、頭痛は性交後から生じたとのことでした。神経学的には異常なく、発症の経緯から性交時の筋肉の過緊張による良性性交時頭痛(筋緊張型)と考えられましたのでその旨を説明しました。本症にはこのほかに、循環系の自律神経機能の異常が関与していると考えられる拍動性頭痛が特徴の血管型や髄膜の小損傷によるとされる起立性頭痛が特徴の低髄液型があります(土山ほか:日本医事新報3678:52-53,1994)。本症は発症時の状況が特異なために、なかなか医療機関で相談できずに悩んでいることもあるようです。

 頭痛は問診によってかなりの程度まで臨床的に診断をつけることができます。そのうえで神経学的所見を加味して、その患者に適した検査法を選択して(不必要あるいは過剰な検査を避けて)診療を進めていくことが肝要です。

 

 脳卒中の現状:脳神経疾患シリーズ
(西宮市医師会報「談話室」、平成14年10月号掲載)

つちやま内科クリニック 土山雅人

 日本の脳卒中患者は、1996年の患者統計によると173万人とされています。これは高血圧性疾患(749万人)、糖尿病(218万人)につぐ第3位の患者数で、癌(136万人)や虚血性心疾患(119万人)を凌いでいます。さらに今後も人口の高齢化に伴い脳卒中患者は増加し、2020年には300万人に達すると考えられています。生命予後の面からみると脳卒中による死亡者数は減少傾向(悪性腫瘍に次いで第2位の年間14万人)にありますが、機能面からみると脳卒中後の生存者のうち、10%が寝たきり、17%が要介助、36%が自立はできるもののなんらかの障害を持ち、特に不自由のない者は3分の1強にしか過ぎません。このように後遺症を持つ患者が多いこともあり、初回発症脳卒中患者は1年後には約20%が死亡しているとも言われています。さらに長期的にみると、脳卒中の再発率は年間5〜10%と少なくありません。当然のことながら再発の度に患者のADLは低下し介護の必要性は増大していきます。その結果、現在の「寝たきり老人」124万人のうちの30〜40%は脳卒中が原因となっています。また、脳卒中にかかる医療費用は年間1.9兆円と、癌の1.76兆円、心疾患の0.7兆円を抜いてトップです。このように脳卒中は医学的にも社会的にも重要なcommondiseaseであると言えます。

 最近では脳卒中の60%以上が脳梗塞になっています。O総理大臣が脳梗塞で亡くなったことも記憶にあると思います。脳梗塞は、比較的太い血管である皮質枝系動脈の粥状硬化によるアテローム血栓性梗塞、数百μ程度の穿通枝系動脈に起因するラクナ梗塞、心臓由来の塞栓による心原性脳塞栓の三つタイプに分けられます。以前はラクナ梗塞が大多数を占めていましたが、最近では食生活の欧米化によってアテローム血栓性脳梗塞が増加すると伴に脳塞栓症も全脳梗塞の2〜3割に達するようになっています。これらの各病型よってリスクファクターや治療薬剤の適応が異なります。一般の診療所においても脳梗塞の発症予防(一次予防)や慢性期の再発予防(二次予防)を行うにあたっては、個々の患者の病型に応じた対応が必要です。特に最近増加している心原性脳塞栓症では、ワーファリンによる抗凝固療法が第一選択となっているので、これからはこのような薬剤の使用も必須になるでしょう。米国や英国では既に脳卒中診療のガイドラインが公表されています(これらの概要と解説は日本内科学会雑誌91巻8号に掲載されています)。本邦でも日本人の脳卒中の特性を踏まえて、脳卒中の診療ガイドラインが関係する各学会の協力のもとに作られており、近いうちに発表される予定です。

 

 脳卒中の診療(脳神経疾患シリーズ 
(西宮市医師会報「談話室」、平成14年9月号掲載)

つちやま内科クリニック 土山雅人

  前号で「兵庫県脳神経外科・神経内科診療所医会」の発足をお知らせしましたが、実際の脳神経疾患についてあまり親しみのない先生方も多いと思います。脳神経疾患に関する最近の話題をこれから何回かに分けてご紹介したいと思います。いつまで続くか分かりませんが、脳神経疾患シリーズを名付けました。まず始めとして脳卒中を取り上げます。

 脳卒中はチーム医療と医療連携のモデルケースと思います。脳卒中にはいくつもの顔があります。病気の流れからは、救命を必要とすることもある救急疾患の側面と再発の予防や合併症の対応が主体となる慢性疾患の側面があります。急性期の治療も、内科的治療が主体のものと外科的治療が必須のものがあり、また最近では血管内治療によるアプローチも行われています。そして回復期ではリハビリテーションに重点がおかれ、慢性期へつなげられていきます。病態を考えると、種々の神経症状を呈する脳神経疾患であるとともに血管系を主座とする循環器疾患あるいは糖尿病や高脂血症を背景に持つ代謝性疾患であったりします。

このような脳卒中医療に関与するスタッフは、神経内科や脳外科の医師、看護師のほか、放射線技師、リハビリの各種療法士(PT,OT,ST)、医療ソーシャルワーカー(MSW)、そしてケアマネージャー、ヘルパーなどがあり、脳卒中の各段階で様々なかたちで関わりを持ちます。脳卒中の診療では、脳神経疾患の専門医がリーダーシップをとって、各職種とともにチームとして治療に当たる必要があります。急性期は医師の治療者としての裁量が大きな役割を持ちますが、亜急性期から回復期に入るとリスク管理の役割が増えるとともに、看護師やリハビリ療法士からの情報を的確に判断して改善の経緯を把握する力量が重要になってきます。脳卒中の病態はダイナミックな流れを持っているので、脳神経の専門医はこのキュア(cure)からケア(care)に向かう大きな流れの先を読んでチームを率いていくことを忘れてはいけません。

 急性期病院の専門医の役割が、患者の主治医(かかりつけ医)を介して自らの専門的知識・技能・見識を患者のために使い、主治医から指定のあった課題に対して責任を負う(信友:内科臨床指導研修マニュアル,239-234,2001)ことだとすれば、普段の健康管理による脳卒中の一次予防や脳卒中再発の予防(二次予防)は、開業医に課せられた役割と言えます。生活習慣病の増加や高齢化社会の到来によって今後ますます脳卒中患者が増加すると予想されるので、開業医の使命もより重大にならざるをえません。

 以上のように最近の脳卒中診療においては、もはや脳卒中患者をひとりの医師のみで急性期から慢性期までフォローすることは困難です。急性期病院と回復期リハビリ病棟担当医あるいは地域の開業医との連携が欠かせません。最近では早期からのリハビリをいかにスムーズにリハビリ病院につなげてリハビリ効果を高め、トータルの入院期間を短縮して在宅に結びつけるかが問われています。脳卒中の地域医療の先進地である熊本市では、熊本市民病院神経内科が中心となって市内の急性期病院や回復期リハビリ病院などを結んだ一貫した脳卒中の診療システムを構築して効果をあげています(橋本ほか:脳卒中における地域完結型リハビリテーション.リハビリ医学,39:416-427,2002)。西宮においても急性期の脳卒中に迅速に対応できる病院や回復期のリハビリに積極的に取り組んでいる病院がありますので、これらと地域の開業医を結びつけるシステム作りを考える必要があります。

 

兵庫県脳神経外科・神経内科診療所医会が発足しました
(西宮市医師会報「談話室」、平成14年8月号掲載)

つちやま内科クリニック 土山雅人

 兵庫県医師会の新たな分科医会として「兵庫県脳神経外科・神経内科診療所医会」(以下、兵庫脳神経医会と略)がこのたび発足し、西宮市医師会の山口三千夫先生(山口クリニック)が会長に就任されました。この兵庫脳神経医会について簡単にご紹介します。

最近の神経科学の領域における研究の発展に伴い、脳神経疾患に対する診断、治療の面でも大きな進歩が起こっています。これまで「分からない」、「治らない」とされていた脳神経疾患についても適切な対処ができるケースが急速に増えてきました。例えば脳神経疾患患者さんの訴えで多いものに、頭痛、ふらつき、しびれ、ふるえなどがありますが、このうちの頭痛を取り上げてもこの数年の間に片頭痛の特効薬とも言える治療薬が使えるようになり、多く片頭痛に悩む人たちの福音となっています。さらにこれからの高齢化社会にあっては、脳卒中、パーキンソン病、痴呆性疾患などの脳神経疾患の増加が予想されるところから、臨床の第一線や在宅医療の現場で脳神経疾患に対する専門的な知識や技能を持った医師の存在は不可欠のものと言えます。今回このような脳神経分野に精通した専門医が連携を密にして、専門知識の情報交換を行い脳神経疾患の診療レベルの向上を図るために兵庫脳神経医会が設立されるに至りました。今後は研究会・セミナーの開催や病診あるいは診診の連携を通じて脳神経疾患の専門知識を地域医療へ還元することも企画されています。

私の専門としている神経内科の立場からみますと、西宮市内の主要な病院には神経内科を得意とされる先生方が何人かおられますがその数は少なく、また独立した診療科として「神経内科」を標榜している訳ではないために、患者さん・医療者ともに脳神経疾患の診療への理解が乏しいように感じられます。脳・脊髄、末梢神経から筋肉に至るまでの脳神経系の疾患を疑った場合には、脳神経専門医にご紹介いただければ幸いです。

兵庫脳神経医会は日本脳神経外科学会または日本神経学会の専門医の開業医師を中心に構成されていますが、神経耳科、神経眼科、脊髄や末梢神経の外科などの診療に携わる医師など脳神経疾患に興味を持つ方々にも広く参加していただいています。西宮市医師会からもすでに10名ほどが会員となっています。ご関心のある先生は当院までお問い合わせください。

尚、兵庫脳神経医会の発足に合わせて、8月31日(土)に頭痛に関する研究会が開催(ホテル・オークラ神戸、午後5時から)されます。当日は私の症例報告「片頭痛様の症状を呈する脳動静脈奇形」を始め数題の会員からの発表と東京女子医大脳神経外科の清水俊彦先生の特別講演「片頭痛の新しい治療法」が予定されています。ご興味のある方は、ぜひお越しください。

第25回日本プライマリ・ケア学会 in 神戸
(西宮市医師会報「談話室」、平成14年7月号掲載)

つちやま内科クリニック 土山雅人

 6月1日・2日に表記の学会が開かれました。今回は兵庫県医師会の担当(会頭:橋本章男・兵庫県医師会長)で開催されましたので、西宮市医師会からも多数の先生方が参加されたと思います。筆者は一般演題の<栄養>のセクションで演者と座長を務めました。やや旧聞に属しますがその報告をします。筆者の発表は「Parkinsonismの3症例における嚥下障害の検討」として、病院勤務時に経験したパーキンソン症候群を呈する神経変性疾患3例のビデオ嚥下造影(VF)所見の分析を行いました。いずれにおいても咀嚼の段階を経て嚥下反射による咽頭通過から食道への流入に至るまでの過程に種々の程度で障害が見られました。嚥下障害は致命的なトラブルにつながることもあるので、安全な経口摂取は神経変性疾患(のみならず一般の高齢者においても)のケアに当たる際に重要なポイントのひとつ
です。嚥下動態の評価はなかなか困難で今回のようなVF検査を実施できる施設は限られていますが、誤嚥が疑われる症例ではVFによる客観的な嚥下機能の評価とそれに基づいた嚥下訓練、食材の工夫、代替栄養法の考慮などが必要と思います。今回の学会でも教育講演のひとつとして「摂食嚥下障害とその対処法」が取り上げられ、この分野への関心が高まりつつあります。これからは在宅・入所・入院を問わず、多職種・多施設間で一貫した嚥下障害のケアができるような地域のシステムを構築していくことが必要でしょう。


 <栄養>のセクションでは筆者の演題以外に、高齢者のADLと栄養状態、PEG(経皮内視鏡的胃瘻造設術)の評価、透析施設や通所施設での食事の話題などが取り上げられました。これらのなかには自分の知らない方面の内容もあり、勉強させてもらいました。そのほかの一般演題や各種の講演も医療・介護・福祉の幅広い分野にわたる内容で、開業1年目の筆者にとって大変有意義な学会でした。この場を借りて今回このような機会を与えていただいた学会事務局の兵庫県医師会の諸先生に感謝いたします。尚、次回の本学会は来年6月に札幌で開かれる予定です。

 

 「脳卒中 倒れる前に まず予防」:脳卒中週間について
(西宮市医師会報「談話室」、平成14年6月号掲載)

つちやま内科クリニック 土山雅人

 平成14年度から脳卒中週間(毎年5月25日から5月31日の1週間)が設けられるようになりました。今年はすでにその期間を過ぎてしまいましたが、ご存じない先生方も多いと思いますのでご紹介いたします。

 近年脳卒中による死亡数は減少(死亡原因の第3位)していますが、後遺症の治療や再発の予防などのために医療機関で治療を受けている患者さんの総数は人口の高齢化とともに増加し、平成10年国民生活基礎調査によると約173万人に達すると推定されています。また、寝たきりを含む要介護者124万人のうち、脳卒中を原因とする者はその約3割にあたる36万人とされています。このようにひとつの「国民病」と言える脳卒中に関しては、これまで集中的な啓発活動が行われていませんでした。そこで脳卒中に関する市民教育の充実を図るために、日本脳卒中協会が主体となって今年度から脳卒中週間のキャンペーンが始まることになりました。期間が5月末になっていますが、これは脳卒中の中でも頻度の高い脳梗塞の発症が6−8月にかけて増加するところから、一般の「脳卒中は冬に多い」というイメージを改める意味が込められています。今年の標語としては本稿のタイトルの「脳卒中 倒れる前に まず予防」と「逃すな前触れ、早めの受診」が、公募された500以上の作品のなかから選ばれ、ポスターとして病院などに配布されました。今後、脳卒中市民講座や健康教室の開催などを通じて、脳卒中に関する理解を深めてもらうことになっています。

 さて、このキャンペーンの母体となっている日本脳卒中協会ですが、1997年の設立以来、市民向けシンポジウムの開催や脳卒中体験記の募集、電話相談(筆者もボランティアで参加しています)などを行っています。年に4回発行される会報には、脳卒中とそれに関連する領域(リハビリなど)の実際が分かりやすく解説されており、最近の脳卒中診療のエッセンスを吸収することができます。会員は脳卒中患者・家族だけでなく医療従事者や行政、福祉の関係者など幅広い層にまたがっています。ご興味のある先生は日本脳卒中協会ホームページ(http://patos.one.ne.jp/public/jsa/)にアクセスするか事務局(tel:06-6629-7378)にご連絡ください(個人年会費は1口2000円)。脳卒中の市民向け教育用スライド、各種資料なども用意していますので、患者講演会などで必要な医療機関はお問い合わせいただければ結構かと思います。ご不明の点があれば、つちやま内科クリニックまでお電話ください。

 

 関西摂食嚥下・障害勉強会
(西宮市医師会報「談話室」、平成14年5月号掲載)

つちやま内科クリニック 土山雅人

 関西摂食・嚥下障害勉強会は摂食・嚥下にまつわる様々な問題について、医療、介護、福祉、養護などの各専門職が一同に会して研鑚する場です。先日(4月7日)、 第20回の勉強会が開催されましたので、本会の紹介を兼ねてその報告をします。

 今回は「進行性神経筋疾患の摂食・嚥下障害」をテーマとして、筆者と藤原百合言語聴覚士(ST)(広島大学歯学部病院)の司会により、筆者を含めた3名の神経内 科医と1名のSTによる講演が行われました。まず筆者が「神経筋疾患について」と してなかなか理解されにくい領域である神経筋疾患に関していくつかのキーワードを 取り上げて解説しました。次に野崎園子医師(国療刀根山病院神経内科)が「パーキ ンソン病の摂食・嚥下障害」としてパーキンソン病にみられる摂食・嚥下障害の特徴とその対策を解説されました。パーキンソン病ではその半数以上に摂食・嚥下の障害が あるとされていますが不顕性誤嚥の場合が多く、栄養状態の低下や肺炎ではじめて摂 食・嚥下障害の存在に気づくことがあるとのことです。さらに巨島文子医師(京都第 一日赤病院神経内科)が「神経筋疾患の嚥下障害」として、筋萎縮性側策硬化症、多 発性硬化症、ギラン・バレー症候群、重症筋無力症、各種筋疾患などを取り上げて、 各々の疾患における摂食・嚥下障害を解説されました。嚥下造影検査をもとに個々の 病態に応じた対応の重要性を述べられました。最後に倉智雅子ST(広島県立保健福 祉大学)が「進行性神経筋疾患の摂食嚥下障害に対する訓練」として、嚥下訓練法の 実際について解説されました。パーキンソン病において運動療法による摂食・嚥下機 能の長期的な改善効果を実証した最近の文献の紹介などもありました。フロアからの質疑も多数あり、予定時間を多少超過して終了となりました。

 本勉強会の出席者はしだいに増え、今回は200名を越えました。関西圏からの参加 が多いのですが、なかには東京、岐阜、山口、長崎などの遠隔地からわざわざ来られる方もありました。出席者の内訳は、STが60%弱、看護師が20%、医師・歯科医師と理学療法士がそれぞれ10%、そのほかに歯科衛生士、栄養士、養護教員などの出席もみられました。医師の出席は最近になってやっと10名ほど(耳鼻科、神経内科が主体)になりましたがまだ多いとは言えません。高齢者や脳卒中後遺症の患者さんが増加している昨今では摂食・嚥下に障害を持つ人たちが増えつつあることが想像されます。兵庫県としても一昨年より摂食嚥下障害対策検討会議を設置して、シンポジウムを開くなどの活動を行っています。今後この方面に関心を持つ医師が増えることを望みます。次回(第21回)は「小児の摂食・嚥下障害」をテーマに9月のはじめの開催を予定しています(詳細は未定です)。またテーマの内容にかかわらず症例の検討も可能ですので、摂食・嚥下に関して相談したいケースがあればお申し出ください。ご興味のある方は事務局(神戸市立西市民病院歯科・口腔外科、足立了平先生)あるいはつちやま内科クリニック(tel:57-3600)までご連絡ください。

 ちなみに臨床的に摂食・嚥下障害を疑うサインには以下のようなものがあります。先生方の患者さんのなかには、このような症状を持つ方はいらっしゃいませんか?

*食事の際のむせ
*食後の咳・痰・湿声
*流涎
*咽頭の違和感
*食欲低下
*水分を避ける傾向
*食事の好みの変化
*食事時間の延長
*食事後の易疲労感
*原因のはっきりしない突然の発熱
*体重減少
*脱水症状 など・・・

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